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6-1
「冷えてねぇ。」
透明のコップになみなみと注がれた日本酒を片手に三園は眉を寄せた。
その様子をまるで見透かしていたかのように、千田は肩をすくめて見せる。
「日本酒の『冷や』ってのは常温が正しいからね。冷えてるのは『冷酒』。冷酒は今ないからそれで我慢して。」
「へぇ…」
「あれ?素直だ。怒るかと思ったけど。」
「別に、んなことで腹立てるほど器小さくねぇよ。お前のそれ何だよ?」
「これ?ハイボール。1対4の割合がベストらしいけど、これは濃い目に作ってる。」
そう言ってグラスを傾けると一気に中身を飲み込んでいく。
カラン…と氷が揺れる音。
涼しげな音を耳に、三園も日本酒を口一杯に含んだ。
ゴクッと飲み込むと鼻に抜ける甘味のある香り、腹のそこから沸き上がるような熱に満足する。
「フゥ…お前、常識は無いくせに食いもんに関する知識はあんだな。」
「誉めてる?貶してる?」
「呆れてる。」
「何それ。」
クスクスと笑うと千田はチーズを口に放った。口の中に残ったそれと、濃いハイボールを一緒に飲み込んでいるのを三園がじっと見つめてくる。
何か聞きたげなその表情に首を傾げた。
「どうかした?」
「…別に、普通だなって。」
「?」
フイッと顔を反らし、三園は残っていた日本酒をさらに飲んでいく。
まるで水を飲むかのような感覚で減っていくそれに、千田は苦笑した。
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