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6-4
「っ、!」
急に立ち上がったからか一気に目の前が暗くなり、その場にしゃがみこんだ。
「お前限界来てんじゃね?」
「……まだ、いける~…」
「そ?別に構わねぇけど。めっちゃ語尾延びてんぞ。」
楽しそうな声。
拐ってきてからこっち、こんなに機嫌の良い三園の声は聞いたことがなかった。
「やられた~、こんなに強いとは思わなかった…」
「負ける勝負は吹っ掛けねぇ。」
「ずるい…」
フンッと鼻を鳴らしコップに残った日本酒をグイッと飲み干す。
下心をまんまと利用されたことが可笑しく感じて、千田はクックッと肩を揺らした。
「笑ってねぇで、さっさと敗け認めやがれ。」
「う゛~…」
チラッと視線を向けた先には、千田のウイスキーを自分のコップに注ぎ始めた三園の姿。
あ、これは勝てるわけない…
「無理だ…まけました~…」
その場にごろんと寝転びながら千田が悔しそうに呟く。
大きく息を吐き出し「三園のうわばみ~、へびおとこ~…」と床を叩く姿にウイスキーを吹き出しそうになる。
まるで子どものような口調と態度。
酔うと幼くなる千田に、三園は声をあげて笑ったー。
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