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窓の外はもうすぐ夜明け。
聞きたいことは山ほどあるのに、ほとんど眠らずハイスピードで飲んでいたせいでだんだんと瞼が重たくなってきた。
「……お前、俺をどうしたいわけ?」
眠気を飛ばすようにワシワシと頭を掻きながら、三園は千田を見つめた。
アルコールに強いとはいえ、全く酔わないわけではない。
千田に『寝るな』と言っておきながら、油断すれば自分も寝落ちしそうな程度には三園も酔っていた。
今転べばすぐにでも眠れる。
けれども、この3日間いくら考えても理解できなかった千田の行動の理由をどうしても知りたかった。
「その質問は、僕が君に何をしたいと思っているのか具体的に答えたら良いのかな?」
千田の少し垂れた目が愉しそうに細められる。
ろくでもないことを言い出しそうなその雰囲気に、三園は眉間にシワを寄せた。
「…それは知りたくねぇ。」
「そうなの?残念。」
アルコールで喉が焼けているのか、千田の声がいつもより僅かに低く掠れている。
行動は異常で言うことは変態臭いが、千田の声は悪くないと思う。
この声で女を口説けば、大抵は落ちそうだな…などと、程よくアルコールの回った頭がぼんやりと考える。
「お前言ったよな。ダチになりたいわけじゃねぇって。なら、俺の何になりたいわけ?こんなことまでして。」
言いながら、繋がれた左手首を持ち上げてみせる。
拉致監禁なんてどう考えても犯罪だし、なぜこんなことをしているのか…その目的が分からない。
「『何に』か…そうだね…」
三園の言葉を繰り返し、千田はゆっくりと瞳を閉じた。
筋ばった大きな手が口許を隠す。
言葉を探しているようにも見えるその様子から視線を外さないまま、三園はウイスキーを口に含んだ。
「……………」
「……僕はね…」
やがて何口目かのウイスキーが胃袋に流れ落ちた頃、千田が口を開いた。
閉じられていた瞳が三園を映す。
自分を見ている筈なのにどこか遠くを見つめている様な瞳に、三園は僅かに息を飲んだ。
「僕は、三園の『記憶』に残りたい」
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