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「記憶…って、なんだよそれ。」 千田の言葉の意味が分からず問い返す。 「んー、そのままの意味だよ…」 そのままって… 記憶って、記憶だよな? コイツのことを憶えてりゃ良いのか? それとも、他に何か違う意味でもあんのか? 言葉の続きを待ってみるが、千田はそれ以上口にすることなくこちらを見つめてくるだけだ。 「「……………」」 沈黙が続く。 だんだんと千田の瞳が閉じられていくようで、寝落ちさせまいと三園は鎖を引っ張った。 「みその~…眠い…」 「俺だって眠いわ。だいたい、負けたくせに寝落ちできるとか思うな。」 「厳しいなぁ…」 「うるせぇ」 フンッと鼻を鳴らし、三園は次の言葉を探した。 この質問はこれ以上追及しても明確な答えは返ってこないだろう。 なら、他の事を聞くしかない。 「…お前さ、本当に俺のこと好きなわけ?」 「うん」 「即答かよ。」 迷わず答えられ、三園は喉を鳴らした。 男で変態だが、好意を寄せられれば悪い気はしない。 これが全うな手段なら、の話だが。 「なんで俺なんだよ。好かれる覚えが無いんだけど。」 「三園と交流は無いけどね。でも、言葉を交わしたことはあるよ。覚えてない?」 「あ?」 「学内のカフェで。」 「…………?」 学内カフェ? なんかあったか? やべぇ、全然憶えてない。 学内カフェはランチが安いのが魅力で、たまに利用している。 けれど、記憶を総動員させても千田とのことが全く思い出せない。 三園が黙ったまま考え込むのを、千田は面白そうに見つめてくる。 「…何だよ?そんなに見つめても思い出せねぇぞ。」 「そうだね」 どこか嬉しそうな表情。 あの日のことを思い出してほしいと期待している…というよりも、三園が自分のことを考えているという事実の方が千田には心地よかった。

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