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「世界が変わるって、大袈裟だな。」 「そう?」 「そうだよ」 「ん~、そうかな…」とクスクスと笑う千田に、少しだけ申し訳なくなる。 千田にとっては大きな事だったのかもしれないが、三園自身は忘れてしまう程度のことだ。 懐かしむように語られると、なんとなく居心地が悪い。 それにしても… 「世界が変わるだの、記憶に残りたいだの言うけど。好きな相手と親密になりたいヤツがとる行為じゃねぇよな、拉致(これ)は」 千田とのことは思い出したが、思い出したからといってこの現状が変わる訳ではない。 寧ろ自分との出会いで世界が変わったというのなら、こんな真似をしている理由が益々分からない。 「『親密に』ね。してるつもりだけど?」 言いながら千田が自分の唇を指でとんとんっと叩く様子に呆れてしまう。 「セクハラなんだよ、それは。だいたいそういう意味じゃねぇ。俺が言ってるのはダチから始めろってことだよ。」 吐き捨てるように告げる。 この数日で何度もされたキス。 減るもんじゃ無いとは言ったが、だからといって許しているわけでもない。 「こんなこと女にしてみろ、強姦魔と変わらねぇからな。」 「……強姦魔、ね」 向けられる視線から顔を背ければ、千田の体が揺れるのが視界に入った。

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