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「痛い…」 「俺だっていてぇよ、バカが」 力が弛んだ一瞬に身を捩り、何とか覆い被さる千田から抜け出した。 向かい合ってズキズキと痛む額を押さえる。 それでも、痛みのおかげで下半身から熱が引きつつあるのが三園にとっては救いだった。 危ねぇ…マジでヤられるところだった 額を擦りながら、ホッと息を吐く。 時間をかけてキスされ続けたせいで唇がジンジンしている。 チラッと千田を見れば「石頭すぎでしょ…」とブツブツ文句を言っていて、先程までの妙な雰囲気が消えていることに三園は安堵した。 「……お前がさ」 「うん?」 床に流れる鎖を見つめながらボソッと呟く。 その小さな声に千田が首を傾げた。 鎖から視線を外さないまま黙っている三園の言葉を待つ。 「……お前が俺にこんなことする理由は分かった」 「うん」 「手段は最低だけど、お前が俺のこと本気なんだってことも…嫌ってほど分かった」 「うん」 ボソボソと言葉を紡ぐ三園を真っ直ぐに見つめる。 あの唇に散々キスをした。 抵抗する体を無理矢理押さえ付け、首筋や鎖骨に(キスマーク)を残した。 嫌がっていた唇が次第に蕩けていくのが愛しくて、熱を孕んだ三園自身に興奮した。 最後までやるつもりは無かったが、三園の全てに煽られ、我を無くすほどに夢中になった自覚はある。 「……………………」 「…三園?」 黙りこむ三園にゆっくりと手を伸ばす。 乱れた前髪を整えようと指先で触れれば、ピクッと肩が震えた。 「触んな」 パシッと手を払われキッと睨まれる。 三園の瞳に自分が映る。 こんなことをされても逸らされない意思の強い視線に自然と笑みが浮かび、三園の瞳がさらに険しくなった。 「笑うな変態。やってること最っっ低だからな!!」 「でも気持ち良さそうだったよね。」 「っ!」 「ふっ、はははは…!」 グッと言葉を詰まらせるのが可笑しくて、千田は声をあげて笑った。 殴られた頬と切れた唇、頭突きされた額。 どこもズキズキと痛むのに、それが何故か心地よい。 カーテンの隙間から日の光が差し込んでいる。 いつの間にか夜は明け、四日目の朝を迎えていた。

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