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第10話

学習しろ、俺の馬鹿野郎。 満たされた後にやってくる罪悪感に、今回も押し潰されそうだ。 「はあああ」 「でっかい溜息。満足していただけましたか?」 「うるせ」 「やーっぱ、上のお口は素直じゃないな」 ばふんと、ベッドに背中を預けた大智は頭の後で手を組んで呆れたように文句を垂れた。 そもそも、素直ってなんなんだ。 素直にしていれば思うように何もかもがうまく進むのか。そんな都合のいいことなんてあり得ない。 もし、素直になったとして、自分の思いと相手の思いにズレがあったらどうする。 年齢のせいなのか、なりふり構わず勢いだけで、とはいかずに余計もどかしいのはわかってる。 「もうさ、俺にしなって。ね?」 大智は軽く言うけれど、他に男が出来たので別れます。とか簡単に言えないだろ。 また一から恋愛はじめます。なんて気力もない。 こんなに振り回されるならずっと一人でいた方が全然いい。 居て当たり前の存在。その価値観のズレなんだろうけど。ぶっちゃけ、もう面倒だ。 「・・・お前も飽きる」 「なにそれ」 「人間そんなもんだろ」 聞き捨てならないとでも言うように、隣のマットレスが沈むと、そっぽを向く俺の顔を無理矢理自分の方へ向かせた。 「本気だって、俺言ったよね?」 「ナンパ慣れしてる奴に本気だなんて言われても信用できない」 「それ偏見」 「世間一般論だ」 ムスッとした顔を掌で押しやると、変な顔した大智にその手首を掴まれて捕まってしまった。掴んだ手首を引き寄せられ、嫌でも距離が近づく。 「白状しちゃうけど、俺、毎日あそこらへんふらついてたからね。南がいないなかなーって」 「そんなん信じられるか」 「もう面倒くさい人だな。まあ別にいいけど、信じられなくても。これから信じてもらえばいいだけだし」 「どこからその自信がくるのか不思議だ」 「南の彼氏より、俺の方に素を出してくれてる気がするのは勘違いじゃないと思うんだけど」 大智は俺じゃないのに、なんでコイツはこう、ベラベラと俺の本音を言ってくるのか。 年下のくせに口でも丸め込まれるとか、本当ばつが悪い。 「ッ、風呂行ってくる」 「あ、手伝おうか?」 「いらん!ついてくんな!」 俺が否定しても大智は全部肯定で返してくる。まるで、肉食動物に追い詰められてる気分だ。 俺は掴まれた手を振り解き、半分逃げるようにバスルームへ向かった。 「さあて、俺も攻めるとしようかな」 俺がケツの処理をしながら、一人羞恥心にやきもきしている頃、大智が俺のスマホを勝手に弄っていることなんて知らなかった。

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