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第12話
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小鳥が賑やかに鳴く声に起こされ、目を開けようとすれば瞼が重くて半開き状態。頭もぼやっとしていて痛い。
「最悪・・」
顔を洗おうと、寝室を出て洗面所で鏡を覗くと、ひっどい顔をした自分がいた。
不意に視界に入った歯ブラシ立てを見れば、二本の歯ブラシが仲良く並んでいるのが見える。
「ッ!!」
自分の方じゃない歯ブラシを掴んで思いきりゴミ箱へ投げつけた。
悔しいんだか、悲しいんだか、わからない。
乱暴に顔だけ洗って、寝室に置き去りにしてあるスマホを取りに行き、リビングのソファーに座ってアイツの連絡先を探してみた。
「・・あった」
案の定、ちゃっかり自分の連絡先を登録してやがった。
勝手に人のスマホを弄って、勝手に俺の今までを掻き回した張本人に電話を掛ける。
『はいはーい』
まるで俺から電話が掛かってくるのをわかっていたかのように、ワンコールで大智は電話に出た。その声は悪いことをしたと思っていないような明るい声で、この行き場の失った気持ちの槍が全部大智に向かう。
「今からいう住所にすぐ来い」
一方的に喋り終えて電話を切り、ソファーに寝転がる。
楽しかった日々を沢山共有して共感しあってきたと思ってた。
喧嘩もしたけど、喧嘩をする度にお互いをわかり合えた気がしたり、振り返ってみれば楽しいことの方が多かった気がする。
そうやって同じ時間を過ごしてきたはずなのに、この数か月の不満や不安で全部が終わってしまった。
でも、あのまま我慢をし続けていてもいつかはこうなっていた気もする。ただ、こんな終わり方は望んでいなかった。
好きになって付き合うまでに何ヶ月もかかったのに、たった数時間で別れるとか・・。
呆気なさすぎる別れに、また泣けてきた。
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