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第13話
大智に電話をしてから一時間くらい過ぎた頃、家のインターフォンが鳴った。
俺はソファーに寝そべったまま動かず、繰り返し鳴るインターフォンを無視する。五回くらい繰り返した後、ようやく静かになると玄関ドアが開く音が微かに聞こえた。
「鍵開いてたよ。不用心だなぁ」
リビングと廊下を繋ぐドアが開くと、お気楽な声と共に大智が現れた。
「南」
耳元で名前を呼ばれてそっと目を開けると、ニコリと笑った大智がすぐそばにいた。
「ひっでぇ顔」
手が伸びてくると、涙が滲んだままの腫れぼったい目をそっと拭われる。
自分があれだけのことをしておいて、掛ける言葉がそれか?謝罪はないのか?
ゆっくり体を起こして、大智と向き合う。
「ッ、ふざけんな!!」
「───ッ!!!いってぇ・・」
わなわなと震える拳で、大智を思いきり殴ってやった。
床に尻餅をついた大智は、殴られた頬を押さえながら唇をすぼめている。口の中が切れたのかも知れない。ざまあみろだ。
「お前のせいで何もかも終わったよ!」
「はっ、俺のせい?」
「そうだよ!」
すっかり頭に血が上った俺は怒鳴りつけるけど、大智はばかばかしいとでも言いたげに、鼻で笑いやがった。
「どっちにしろ終わってただろ」
「ッ、それでもあんな終わり方はしたくなかった!」
酷く落ち着いた声で核心をつかれて、またじわりと涙が溢れてくる。
「お前に俺の何がわかるんだよ!」
「わかんねえよ」
大智の胸ぐらを掴んだまま馬乗りになって泣きながら怒鳴った。
俺はこんなに感情的になってるのに、大智は表情一つ変えず俺の罵声を聞いている。
「なんなんだよ!マジふざけんな!」
「南が彼氏の事をどんだけ好きだったとか、そんなんわかんねーよ。ただ、俺には苦しそうに見えた。だから無理矢理にでも強引に奪ってやるって思った。そんだけ」
「意味わかんね・・」
「言いたいことも言えなくなったら、それってどうなの?自分が諦めて我慢すればいいってどうなの?俺はそんなの嫌だね。だから二回目の時、南から求めてきてくれたときはマジ嬉しかった。調子こいてやり過ぎだったかも知れないけど、俺は謝んないから」
「っ、可哀想な奴を救ったヒーロー面かよ・・」
「ま、それでもいいけど。隙を見せられて、そこにつけ込まない男がどこいにるんだよ」
「奪い方がおかしいだろ」
「俺の奪い方はこうなの」
恋人と別れてしまったことがあんなに悲しくて悔しかったのに、大智の本音を聞いた今は、心がなんだか穏やかで、あんなにモヤモヤイライラしていたのが嘘みたいだ。
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