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第32話
片づけと洗い物を光がする間に、清正が汀を風呂に入れる。そのまま二階に連れていって寝かしつけている間に、光も風呂に入った。
久しぶりに一人で入る風呂は、汀には悪いが、やはりゆっくりできるし落ち着いた。
風呂から上がると、清正が日本酒を運んでいるところだった。薩摩切子のグラスと揃いの銚子をリビングテーブルに並べる。道具の選択に光は満足した。
「次長が餞別にくれた。故郷の地酒らしい。光も飲むか」
「うん。少しもらう」
グラスは初めから二つ出ていた。
清正の手で酌をされて冷酒を口に含む。すっきりとした口当たりが爽やかだった。
「清正って、けっこう酒飲むの?」
「たまにな。飲んで、勢いつけたい時もあるし」
「何の勢い?」
首を傾げる間に、清正が隣に移動してきた。光の手からグラスを取ってテーブルに戻す。
「な、何だよ」
「何だよじゃないだろ。おまえ、この前俺が言ったこと、もう忘れたのか」
何か言われただろうか。本気でそう思った。
「忘れたんだな」
「えっと……」
清正の手が腰に回る。
「一度触ったら我慢できなくなる。そう言っただろ。これからどうなっても、全部光のせいだって教えたはずだ」
驚いて清正の顔を見た。
「だ、だって、おまえ、男とは……」
「ああ、男に欲情したことはない」
たぶんゲイでもない、と付け加える。
「だったら、なんで……」
「しょうがないだろ。俺だって、ずっと困ってたんだ。ずっと、光にしか欲情しない」
何を言っているのだ、さんざん多くの女性と浮名を流しておいて、ぬけぬけと勝手なことを言うなと必死に責めれば、たまたま誘われて流されていただけだと、言い訳にもならないことを口にする。
その間に、小さく唇を啄まれた。
「な、な……」
「そろそろ黙れよ、光」
再び唇を塞がれ、そのまま押し倒される。
何が起こっているのかわからなかった。
顎を掴まれて無理やり口を開かされて、中を舐められた。舌先が触れ合った瞬間、頭の芯で火花が弾けたように脳が白く焼けた。感電したのかと思うくらい、身体中が痺れた。
「ん、ん、んん……っ」
もがいて押し返そうとすると、パジャマの裾から大きな手のひらが忍び込んできて、するりと脇腹を撫でた。
「あ……っ」
「いい声」
唇が首筋を辿る。
身体の形を確かめるように、指が肌の上を這い上った。腰骨を撫でられて、ぞくぞくと肌が粟立つ。ふだんは定期的に処理するだけの、ほとんど放置している股間が熱を持ち始めた。
「や、やだ。清正……、なんでこんなこと」
「本当に嫌だったらやめる。どこまでならしていい?」
「ど、ど、どこまで……?」
どこまでって、何がだ。
「わかんない」
泣きそうな声で答えて首を振ると、清正が呻いた。
「予想はしてたけど、おまえ可愛すぎるぞ。いきなり全部受け入れろとは言わないけど、いつまで我慢できるか自信ない」
ぎゅっと抱きしめられて、こめかみにキスが落とされる。
「ああ、やばい。今すぐめちゃくちゃにしたい」
「や、やだ……」
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