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第15話

「なぁ、どうしてお前は声を出して笑わないんだ?」 「――――ッ!?」 目つきの鋭い茶髪の男の人が呟くように言った言葉に反応し、ボクは瞬時に顔を上げる。 すると皆がボクに視線を注いでいるのに気がついた。 「………あっ、」 咄嗟に怒られると思ったボクは、ぷるぷると震えながら目の前にある首元にしがみつき、何とか自分の顔を隠そうとした。 顔を殴られるのは物凄く痛いからだ。顔を殴られるくらいなら、まだ身体を蹴られたり切りつけられる方がマシだった。 でも何故かそれを見て皆は大声で笑い出す。 「やっぱこいつマジで小動物に似てやがる! クッソ可愛いじゃねーかよッ!!」 「うん、ヤバいかも! 流星の気持ちがちょっと分かっちゃったよ俺!!」 などと赤い髪の男の人や金髪の男の子が興奮気味に言う。そして周りの男の人たちもクスクス笑いながら、うんうんと頷いているようだった。 ボクは何のことか分からず小首を傾げていると、白銀の髪の彼が穏やかに微笑んだ。 「笑うのに声を殺して我慢する必要はない」 「そうだよ、笑いたければ声を出して笑えばいい」 オレンジ色の髪の男の人もニッコリと笑ってボクの頭を撫でた。 その隣りに立つさっきの無口で気難しそうな茶髪の男の人も、今は優しい表情で静かに笑っている。 ―――あ、そっか。ボクもうあの人たちに怯えなくてもいいんだ……。 彼らの言わんとしている事が頭ではなく心で理解できた瞬間、肩が小刻みに震え出した。 そして漸く自分が泣いているのだと気づく。 さっきの余韻もあってただ静かに涙が頬を伝い、次第に嗚咽が漏れ始めてきてボクはまた彼の首元に縋りつき泣いた。 「うぅっ、ヒック……ボク…もっ……我慢しなくて……ぃいっ…のぉ……?」 「……あぁ、もう我慢しなくていい。今までよく頑張ったな」 「んっ……ふっ、ぅ……うわあああぁんっ」 白銀の髪の彼はボクを強く抱き締め、背中を優しく擦り続ける。他の皆もただ見守るように無言で見つめてくれていた。 彼らの優しい気持ちが痛いほど伝わってきて、ボクは死ぬほど嬉しかった……。

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