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第20話

何故か虎汰は対抗意識丸出しで唸り、流星くんを睨みつける。 ボクはまた取っ組み合いのケンカが始まるのかとヒヤヒヤしたが、朔夜さんがまた睨みを効かせてくれたので今回は事なきを得てホッとした。 「んー、普段から二人はこんな感じだけどキミが関わると張り合っちゃうみたいだね」 和之さんに呆れた顔で溜息を吐かれ、言われた意味が分からないボクはどう返していいのか戸惑い、ただ苦笑を零すだけに終わる。 でも、見渡せば残すは彼のみとなった。 期待を胸にそっとまた隣りの整い過ぎているキレイな横顔を窺い見る。 どこまでもボクの心を惹きつけて止まない、まるで雪原を駆ける白銀の狼のような人……。 ドキドキと胸が高鳴るのに、けれどいくら待っても彼の口は動こうとしなかった。 「……煌騎、お前の番だ。この子に自己紹介してあげなよ」 「…………あぁ、分かってる」 不審に思った和之さんが優しく声を掛けると、長い沈黙を破り漸く彼が口を開きこちらを向いた。 ふと間近で見ると彼の瞳は左目が濃い深緑、右目は淡い紫色をしているのに気づく。 ―――あ、オッドアイだ……。 一見すると漆黒の瞳に見えるが、よく見ると光の加減や何かで両方共の色が違うのが分かる。 それはとてもキレイな瞳だと思った。 いつか地下室で見つけた古い雑誌に載っていた異国のモデルさんが、確か彼と同じ瞳をしていたように思う。 ボクには雑誌を買うお金も、ましてや買いに行ける自由すらもなかった。 でも時折降りてくる男の人たちが置き忘れた新聞や雑誌を、いつもバレないようにこっそり隠して後で読んだりしていたのだ。 ボクにほんの少しだけ外の知識があるのはそのお陰と言ってもいい。 「すまない、自分の肩書きを考えていたらボーっとしてしまっていた……」 暫くして聞こえてきたのは彼らしい透き通る優しい声だった。ゆっくりとボクの目を覗き込んで、にっこり微笑んでくれる。 「俺は白銀(しろがね) (こう)()、歳は17で高2だ。一応、暴走族の(はく)(じゅ)~white eagle~の8代目総長をしている」 心を擽るような低くて甘い声色で彼、煌騎は静かにそう名乗った。

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