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第21話〜ボクは何者ですか?〜

―――白銀(しろがね) (こう)()、か……。 彼に相応しい名前だと思った。 欲目でそう思ってしまうのかもしれないけど、大事に彼の名を頭の中で反芻していると、真上からクスリと笑う声が聞こえた。 「俺の名を気に入ってくれたのは嬉しいが、そろそろ俺たちもお前の名前が知りたい。聞いてもいいか?」 「―――え!? あ、名前……えと…ボクの名前っ」 どうやらボクは微笑みながら口に出して反芻していたらしく、周りの皆もクスクスと笑っている。 それに浮かれ過ぎて肝心な事を忘れていた。 ボクはまだ彼らに自分の名前すら名乗っていなかったのだ。 でも名前……ボクの名前……。 「…………ぁ………」 長い間誰からも呼ばれず、また自身で名乗る機会すらまったくなかったボクは、自分の名を忘れてしまったらしい。 辛うじて覚えてるのは幼少の頃の愛称だけだ。 そんな事があるのだろうかと必死に思い出そうとするけど、頭の奥から鈍痛がして結局は思い出せず断念してしまう。 俯き加減にその事を素直に打ち明けると、彼らは複雑な表情をした。 「そっか、それじゃ子供の頃の呼び名は何て言うの?」 気遣ってかそう和之さんが尋ねてくれたが、ボクは喉が詰まってしまってなかなか声が出せない。 皆と同じように自己紹介もできない自分が不甲斐なくて、居たたまれない気持ちになって完全に下を向いてしまう。 すると煌騎が慰めるようにボクの頭を撫でた。 「心配するな、俺たちが必ずお前の名を取り戻す」 「そうだよ、朔夜ならPCでチョチョイのチョイだから! 大船に乗ったつもりでいてね」 「……う…うん、ありがとう」 虎汰も明るく言って励ましてくれる。和之さんも流星くんもニッコリ笑ってボクを元気づけてくれた。 だけど朔夜さんだけは難しい顔をしてPCから目を離そうとしない。 暫くカチャカチャとキーボードを長い指先で叩いていたけど、遂には天井を仰いで「ア゙アアァッ、クソッ!」と奇声を上げ頭を掻き毟る。 只ならぬ雰囲気に一同は一斉に朔夜さんに目を向けた。 「どうした珍しいな、朔夜が苦戦してるなんて……」 事の深刻さを察し、流星くんが言葉を選びながら声を掛けた。 けれど朔夜さんは苦虫を噛み潰したような顔をし、彼を一瞥しただけで再度PCに向き直る。

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