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第23話

客観的にみても誰もが犯人を自分だと思うのではないか? ――そう考えてしまったのだ。 確かに地下室から抜け出す際、手擦って物を幾つか倒し壊してしまったかもしれない。けれど決してボクが放火したのではないのに……。 気がつけば涙目になりながら首をフルフルと振っていた。 「違…う、ボク…じゃ……ボクじゃないっ」 「バカッ、当たり前だろがっ! 誰もお前を疑っちゃいねーよ!! くだらなねぇ心配すんなっ」 流星くんの怒気を含んだ声音にビクンとし、ボクはハッとして我に返る。 周りを見ると彼同様、自分たちが疑っていると思われた事に皆、少なからず憤りを感じている様子だった。 「流星の言う通りだ。俺たちはキミを疑ったりしない。だから不安にならないで?」 諭すように虎汰に言われてボクはコクコクと頷き、何とか取り乱した心を落ち着けた。 隣りの煌騎が労るように背中を優しく撫でてくれている。それに震える笑顔で応え、もう大丈夫だよと瞳で訴えた。 その様子を見て皆がホッと息を漏らして安堵の表情を浮かべる。それからボクが完全に落ち着くのを待ってから和之さんはまた口を開いた。 「ごめんね、俺の説明不足だ。大きな屋敷をキミみたいな華奢な子が容易く焼失させられる筈がないんだ。だとしたらそれは迅速に動いた別の第三者がいるということ。警察内部では既に放火した人物は特定されているらしいよ」 「……らしい? どういう事だ」 今まで何も言わず、静かに事の成り行きを見守っていた煌騎がゆっくりと彼に問い掛ける。 それに対して和之さんはどこか困った風に苦笑すると、両膝の上に肘をついて手を組み合わせてその上に自分の顎を乗せ深い溜息を吐いた。 そして静かに煌騎へと視線を向ける。 「残念ながらそこまではまだ情報収集できていない。俺やお前クラスじゃないとあちらさんも提供してはくれないみたいだ」 「なるほど、それだけ重要な情報って事か……」 和之さんは無言で頷く。 ボクは二人のやり取りを黙って見ていたけど、言っている意味がまったく分からなかった。 つまり和之さんや煌騎でないと、手に入らない情報があるという事なのだろうか? 見るとボク以外の皆は話の内容が分かるようで、二人の会話を黙って見つめていた。

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