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第24話

「とりあえず俺と朔夜とで警察行ってくるよ」 「―――え、俺も?……あぁ、例の取引ってやつか。仕方がない、めんどくさいけどついてってやるよっ」 突然話を振られて驚く朔夜さんだったけど、直ぐに状況を飲み込んだのかそれに同意する。 ボクは変わらず話の流れが分からないままで、後でこっそり虎汰に尋ねたら彼らと顔見知りの刑事さんに裏取引を持ち掛け、欲しい情報をこちらに流して貰うつもりらしかった。 朔夜さんは世界的にも有名な天才ハッカーで、その能力は警察内部でも認められているらしい。少し捜査協力すればある程度の情報は簡単に教えて貰えるのだそうだ。 もちろん不正に入手した情報は“そうだ”とは言わないし、向こうも敢えてその事は何も聞かない。 『ギブ&テイク』、持ちつ持たれつの関係なんだよと虎汰は笑っていた。 「最悪の場合はお前の名前を借りるぞ」 「あぁ、好きに使ってくれて構わない。その間に俺は親父に挨拶してくる。どこに火の粉が飛ぶか分からないからな……」 煌騎の言葉に皆が神妙に頷く。 そして暫くはその場に静寂が訪れ、ボクはその事で漸く話が纏まったのだと分かった。 何もしていないハズなのに既に疲労困憊。そんなボクを余所に、何故か皆の目線がある一点に集中する。 ………そう、ボクだ。 どうして皆に見られているのか分からなくて、戸惑いがちに首を傾げた。 「………う?……な…なぁに?」 「いや、キミの呼び名がないと色々と不便だなぁと思って……」 「そういや子供の頃の愛称は覚えてるんだろ?なら、それでいいんじゃねーか」 まず虎汰が頭を捻り、それに流星くんが即座に答えた。皆も納得して頷き、またボクに視線を戻す。 「……で、キミは何ちゃん?」 和之さんに静かに尋ねられ、皆にも一斉に期待の眼差しを向けられて少したじろいだけど、確かにいつまでも名無しのままでは皆も困るだろうと思った。 ボクは意を決して口を開く。 「子供の頃はボク……皆から"チィちゃん”って呼ばれてた…の」 久しぶりに自分の愛称を口にして、思わず瞳から涙が一粒零れ落ちる。 ボクの子供の頃の呼び名……。 それが本当に自分の愛称だったのかはもうまったく思い出せない。でもやっと自分を取り戻せたような気がした。

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