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第26話
「お前を拾ったのは俺だ、面倒みるのは当たり前だろ? 理由なんてそれだけで充分だ」
さも当然というようにさらりと言ってのけた煌騎は、いたずらっ子みたいな顔でニッと口端を上げた。
そしてボクの頭を今度はぐしゃぐしゃっと少し乱暴に撫でる。
「変な気を遣うな、俺が好きで勝手にやってることだ。お前はそれに甘えていればいい」
「そうだよチィ、甘えちゃえ甘えちゃえ! 煌騎はこれでも俺たちよりお金持ちだから気にすることないよ♪」
横から虎汰が茶化して楽しそうに言う。
余計な事を言うなと煌騎は渋い顔をしたけど、でも直ぐに機嫌を直してボクを見た。
「まぁ……、そういうことだ。観念して俺に面倒を見られていろ」
そう今日一番だろう最上級並の微笑を浮かべて言われれば、ボクの微々たる抵抗力は見事にすべて剥ぎ取られ降伏するよりなかった。
力なく肩を落とし、情けない顔でコクンと頷く。それに満足げに頷いて応えると煌騎はボクをソファに残し、ゆっくりと立ち上がった。
「それじゃ、行ってくる」
「う……うん、行ってらっしゃい」
彼と離れるのは心許ないし寂しかったけど、これ以上は我が儘を言えない。ボクは無理やりに笑顔を創るとこっそり唇を噛み、煌騎たちの後ろ姿を見送った。
後に残されたのはゆるふわ金髪ヘアの虎汰と、赤い髪がピンピンと跳ねた流星くんだけ……。
知らず知らずの内に緊張して身体が強張った。
「そんなに緊張しないでよ、チィ~」
「俺ら、見た目はそりゃ確かに怖いかもしれないけど内面はすっげー純粋なんだぜ?」
何のフォローかよく分からないが、虎汰と流星くんが必死に言い募る。その言葉にちょっとおかしくなってププッと吹き出すと、二人は安心したようにホッと息を吐いた。
「やっとチィが俺らにも笑ってくれたぁ~♪ 」
「さっきから煌騎しか見えてない感じだったもんなっ」
そう言って本当に嬉しそうに笑みを浮かべる二人。心からボクが笑った事を喜んでいるようだった。
途端に申し訳ない気持ちになる。
怯えが先に立ってしまってあまり周りをよく見てなかった。彼らはこんなにもよくしてくれているのに、ボクはなんて愚かなんだろう……。
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