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第31話

「健吾の話じゃ私ら多分、同い年だろうって言ってたから敬語はいらない! 名前も呼び捨てにしてね♪ 」 「ククッ、誰かさんと同じこと言ってるぜ?」 上から流星くんが堪えきれずにクスクスと笑い、横に立つ虎汰の顔を窺う。すると彼は眉根を寄せ、口を尖らせると拗ねたようにぷいっとそっぽを向いた。 「あの、虎子……ちゃん、お洋服貸してくれてありがとう。それから、これからもボクと仲良く……して、くれる?」 ボクはおずおずと彼女にお礼を言い、ぺこりと頭を下げた。地下室ではあまり異性を見なかったので、胸が変にドキドキする。 それに対して虎子ちゃんは天使の笑みを返してくれた。 「呼び捨てでいいのに……でも、うん! 私で良かったら友だちになろ♪ そだ名前っ、貴方の名前教えてよ!」 「名前……は…あの……、思い出せなかったから皆には“チィ”って呼んで貰う事になった……の」 「そっか、じゃあ私もチィって呼ぶね!」 虎子ちゃんはある程度の事情を聞いているのか、ボクが変な事を言っても驚かなかった。 外見が虎汰にそっくりな()()か、彼女には警戒心も抱かずすんなり受け入れられる。それもひとえに迫力のある本気トークのお陰かもしれない。 「うんっ! あ、…ところで……あの、さっきから気になってるんだけど、健吾さんって……誰?」 「あぁ、言うの忘れてた。健吾っていうのは怪我してたお前を治療した医者のことだ」 疑問に答えたのはボクを抱っこしたままの流星くんだった。でもあまりに短すぎるその説明に虎汰が呆れ返り、その言葉を継いで“健吾”という人のことを教えてくれる。 「この近くで開業してる医者なんだけどさ、けっこー昔はやんちゃしてたらしいんだ。だからたまに俺ら見兼ねて面倒みてくれてるんだよ」 「明日また往診に来てくれるから、話してみるといい」 クセの強い人だけどいい奴だからと流星くんが言い、続けて虎汰が頷きニコリと笑う。ボクはコクンと頷き返し、彼らが信頼を置いている人ならとそれを承諾した。

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