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第33話〜臆病者のボク〜
ボクたちは都内に到着した車から降り、何軒かのブティックを見て回った。
もちろん一番最初に立ち寄ったのは靴屋さんだ。虎子ちゃんはボクの足の怪我を考慮して、動き易くて負担の掛からないものを選んでくれた。
その後は二人を後方に遠ざけ、右足を引き摺るようにして歩くボクを補助するみたいに彼女が支えてくれ、生まれて初めてのお買い物を楽しんだ。
けれども―――…。
「………ちょっとアナタ、いいかしらっ」
雑貨屋で物色中、不意に後ろから誰かに声をかけられた。突然の事に驚き辺りをキョロキョロと見回したけど、今はボクの周りに誰もいない。
ちょうど虎子ちゃんは会計を済ませてる最中で少し離れていた為、ボクに話し掛けたのは間違いないようだ。
でもボクに知り合いがいる筈もなく、首を傾げながらそちらへ振り返ると、そこには4~5人の女の子がこちらを敵視したように睨んで腕を組み立っていた。
「あなた、あの方たちとどういう関係なのっ」
「………えと、あの…方……たち……?」
彼女たちの言っている意味が分からず、また首を傾げると険しい表情をされる。
「とぼけないでよ! 少し離れてはいるけど先程からずっと“白鷲 ”の虎汰さまと流星さまが貴方の警護をなさってるじゃない!!」
「―――あ……」
そう怒鳴られ漸く誰の事を言っているのかが分かった。でもどうして彼女たちにその事で問い詰められているのか、それがまだ分からない。
一言も発せられず驚きと戸惑いでその場に立ち尽くしていると、背後に誰かが立つ気配がした。
その瞬間、周りに緊迫した空気が流れる。
振り返るとそこには険しい顔をした虎子ちゃんがいた。
彼女は遠くで漸くこの異変に気づいた流星くんたちが、慌ててこちらに駆けつけようとするのを手で制し、大丈夫だからと首を振って女の子たちに向き合う。
「あんたたち、誰の許しを得てこの子に話し掛けてんの?」
「―――あの、虎子ちゃ……」
威嚇するような低いボイスで言う虎子ちゃんに、ボクを取り囲むように立っていた女の子たちが僅かに退く。
けれどグループのリーダー的存在なのだろう女の子は、負けじとその場にぐっと留まった。
「何よっ、虎汰さまの双子の妹だからって偉そうに! あんたなんか所詮オマケじゃないっ」
「……へぇ、ずいぶん言ってくれるじゃない」
女の子の言葉に虎子ちゃんの表情が変わる。
まるで感情を失くしたかのような無表情になり、暫くしてすぐに気持ちを落ち着かせようと深く息を吐く。
彼女なりにここで騒ぎを起こしてはいけないと思ったのだろう。それから再び目の前に立つ女の子を静かに睨み付けた。
「“白夜 ”の虎子さまもナメられたものね。でもあんたさぁ、今ので二つのチームを敵に回したの……気が付いてる?」
「―――えっ、」
「フフッ、気づいてないなら教えてあげる。訳あってこの子の身柄は今、白鷲 預かりになってるの。だからこの子に手を出せば必ずチームが動く。もちろんウチもね?」
それがどういう意味か、分からないほどバカじゃないでしょ? と不敵に笑う虎子ちゃん。
するとさっきまで強気だった目の前の女の子の顔が、どんどんと蒼白になっていく。周りの女の子たちも口々にヤバいよと囁きながら怯え始めた。
ボクには何の事だかさっぱり分からない。
でも今は聞いちゃいけない状況なのだと本能的に悟り、そのまま無言を貫いた。
「でも今ならまだ手も出してないし、見逃してあげる。二度目はないから……さっさと私たちの前から消えなさいッ!!」
そう一喝すると、女の子たちは逃げるようにバタバタとその場を去った。
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