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第37話

あれだけ容姿が整っていて背も高く、包容力もあれば女の子が放って置く筈がないのだ。それにボクは男の子だから、無理なのは初めから分かってたじゃないか……。 諦めることにはもう子どもの頃からずっと慣れている。どうやっても望んだものは何一つ手に入らなかった。 いつしか望むことすらも諦め、1日がなるべく早く過ぎるのを祈るようになっていた。 「………チィは諦めちゃうんだ?」 まるでボクの胸中を読んだように虎子ちゃんが顔を覗き込んできた。でも彼女を正面から見られない。 自分の顔を隠すように反らし、真意を悟られないようにする。 「あ…諦めるって、何を……?」 「誤魔化したってダーメ! チィは煌騎くんのこと好きになっちゃったんでしょ?」 「ボッ、ボクが…煌騎をすっ…すすす好き!? なっ、何を言ってるの虎子ちゃん!? そんな事あるハズ……っ」 知らないはずの感情を指摘され、ボクは大きく驚いて動揺した。先ほどからズキズキと胸が痛むのはもしかしたらその()()……? これが“好き”という気持ちなのだろうか? どれも経験したことのないものばかりで戸惑ってしまう。だけどボクは素直にそれを認められなかった。 「そ、そんなはずないよ! だって煌騎とは今朝会ったばかりなんだよっ!? それにボク男の子だしっ」 首を横にブンブンと振り彼女の言葉を強く否定する。けれど虎子ちゃんはボクに優しく微笑むと、彼女もまた同じように首を横に振った。 「チィ、怖がらないで? 大丈夫だよ、人を好きになるのに時間や性別なんて関係ないんだから……」 「……時間や性別は、関係……ない?」 首を傾げるボクに虎子ちゃんは強く頷く。 それからニッと口端を弓なりに上げてゆっくり立ち止まると、その場で大きく伸びをした。

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