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第38話

「そういう私も流星に一目惚れだったしね♪ 昔、ガラの悪い連中に絡まれてたトコをあいつに助けて貰ったの」 "コレは内緒ね?”と虎子ちゃんが無邪気に笑う。彼女曰くボクは今まで閉鎖的な環境にいた為に、まだ恋を知らなくてただ怯えてるだけなんだって教えてくれた。 「戸惑うのはわかるかけどさ、それを否定したらチィの初めての気持ちが可哀想じゃん」 「―――でっ、でも煌騎にはもう……」 そう、彼には既に決められた人がいるのだ。 この気持ちを認めてしまったら、もう傍にも居られなくなってしまう。それだけは絶対に嫌だった。 「う~ん、望みがなかったら傍にいちゃいけない? 想い続けても意味がないと思ってる?じゃあ、私の恋も報われないね」 「虎子ちゃんは女の子だからまだ望みがッ―――…」 「ないよ、流星が私に振り向く可能性なんて1パーセントの望みもない」 間髪入れずに虎子ちゃんは断言した。 泣きそうなのをグッと我慢しているような顔で笑って……。 「あいつはさ、私のこと女として見れないんだよ。顔も瓜二つな親友の妹だからね……」 「―――あっ、」 たぶん彼女にとっては触れられたくない部分だったのだろう。でも敢えてそれを口にした。 ボクが後ろ向きでうじうじと考え、自分の気持ちを押し殺そうとしたから……。 彼女を深く傷つけてしまったと思った。 「ごめんなさいッ、ボク事情も何も知らなくて勝手なこと言った!!」 「ふふ、気にしないで? だからといって私、諦めるつもりまったくないから♪ 」 虎子ちゃんは次の瞬間には晴れやかに笑っていた。その顔には迷いが一切ない。純粋に彼女が羨ましいと思ってしまった。 「……ねぇ、ところでお腹空かない? 少し歩き疲れたことだし休憩しましょうか」 「え、でもお買い物……」 今は時間を示すものが何もないので、正確な時刻はわからない。けれどもうかなり遅い時間にはなっている筈だ。のんびりしていると店が閉まってしまう。 ところが虎子ちゃんはボクの意見も聞かず、さっさと後方の二人の元へと向かってしまった。 仕方なく後をついて行くと、必要なものはある程度揃えられたとのことで、お買い物はこれでお開きとなったのだった―――…。

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