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第45話

けれど口にはまだ大きな唐揚げを咥えているので食べられない。 そのまま助けを求めるように隣を見ると、虎子ちゃんは苦笑して仕方ないというように身を乗り出し、パクンとそれを口に咥えた。 「―――あっ!? テメェ、何しやがんだよっ」 流星くんが慌てて文句を言ってももう遅い。 彼のドリアは虎子ちゃんが美味しそうに咀嚼し、ゴックンと嚥下した後だった。 「フフン、残念だったわね流星♪ っていうかこんな熱いのチィに食べさせようとしないでよ、舌ヤケドしちゃったじゃない!」 そう言って虎子ちゃんは優雅にコップのお水を飲む。でもよっぽどそれが熱かったのか、あっという間にゴクゴクとお水を飲み干してしまった。 ボクは茫然とそれを見つめる。 「チィ、唐揚げは美味しい?」 「―――う? んぁ…っ」 虎汰に尋ねられてボクは漸く唐揚げを両手で持って食べ始めた。そして一口食べた瞬間、肉汁がジュワッと溢れ出てきてあまりの美味しさに顔が綻んだ。 「美味しいっ、凄く美味しいよっ!? こんなの今までに食べたことないよっ」 ボクは夢中でそれを食べた。 途中から何でか涙がボロボロ溢れてきたけど、そんなの気にする余裕もなくただひたすら食べた。 美味しいよ、美味しいよと何度も繰返し呟きながら……。 口いっぱいに頬張ると虎子ちゃんが優しく背中を擦ってくれて、慌てないでもたくさんあるからねとコップの水を差し出してくれる。 それから何故か虎汰も流星くんも自分の食事を後回しにして、不器用なボクの世話を焼いてくれた―――…。

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