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第46話〜己の背負うもの〜(煌騎side)
「それじゃ煌騎、また後で……」
「あぁ、」
そう和之たちと倉庫の前で別れてから数分後、俺はとある老舗の料亭に来ていた。
目的はただひとつ―――…。
親父に今後の俺の行動を黙認させ、口出ししないよう釘を刺す為だ。話がしたいと連絡を取ったらここを指定された。
未成年の高校生をこんなトコに呼びつけるなんて何考えてんだか、あのクソ親父……。
相変わらずふざけた野郎だ。
もっとも“親父”などと呼んではいるが、俺との血縁関係はない。親父は親父でもこれから会う人は、この県内を締める鷲塚組の組長だ。
その昔、俺の父親の相棒だった男がその極道の息子だったらしい。しかもいずれは組織を継ぐ跡目だったそうだ。それが10年前、ある抗争で呆気なく命を落とした。
その時現場に俺も居合わせたらしいが、当時はまだガキだった所為か殆ど何も覚えちゃいない。
ただ何かの発砲音が数発続いて、その場が騒然となったのは覚えている。場所は“白鷲”の溜まり場であるあの倉庫。
ガキは俺以外にも何人かいて、大人数人に外へ強制的に連れ出され、安全な所へと避難させられた。そしてその翌日、跡目が亡くなって俺の父親が行方を晦ましたと聞かされた。
組の中には俺の父親が跡目を殺したのではと疑いの目を向ける者もいたが、鷲塚の親父が一喝してその疑惑は一旦鎮まった。
親父は以前から俺の父親を組に迎え入れたいとほざくほど気に入り、誰よりも信頼を置いていたからだ。
だが1度は鎮まった疑いの念は、今でも組内で根強く息衝く。
父親が誰にも理由を告げず姿を消し、母親もその2年前に離婚していて既にこの地を離れていて連絡が取れなかった為、親父は仕方なく俺を引き取った。
それが跡目の遺言でもあったから……。
生前、俺の父親と自分たちの子供を結婚させようと話していたらしい。跡目には俺より1つ下の娘がいたからだ。
数回会った事はあるがあの現場にもいたらしく、騒ぎに紛れて何者かに誘拐されたのだと随分時間が経ってから聞いた。
ひと月後に組員の手によって無事救出されたが、次に顔を合わせた時にはそいつは別人のようになっていた。
外見はまったく変わりないのに、何故か俺の知ってる奴じゃないと感じる。しかし所詮はガキの戯れ言と誰も耳を貸さなかった。
娘も両親の死と誘拐された時のショックで、人格が変わってしまったのだろうと言って……。
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