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第49話
甘えるような猫なで声で話し掛けてはくるが、その目は決して笑ってはいない。こんな時の愛音は必ず何かを企んでいる。俺はなるべく平静を装い、逆に尋ね返す。
「お前が何故、それに興味を示す? 箱入りは箱入りらしく鉄壁の箱に入って守られていろ」
「フフッ、相変わらず冷たい人。それを言われたら私が黙ると分かってて言うんだから……」
まるで堪えてもいないとでもいうようにクスリと笑う愛音。だが親父の手前、一応は悲しげな仕草をわざとらしくもして見せるが、俺に向ける目線はまったく堪えた様子もない。
「愛音、煌騎はお前の身を案じて言っているんだ。聞き分けなさい」
そこへ鼻の下をデレデレに伸ばしたクソ親父が勝手にほざく。どこの世界もジジィは孫娘に弱いモノだ。
愛音も親父の言うことには逆らえないので、助かったと言えば助かったのだが複雑な心境だった。
「話はそれだけか?……なら飯にしよう。今日は晩酌に付き合ってくれるんだろうな、煌騎」
手を叩いて女将を呼び、食事の用意をさせながら親父は口端を上げてニヤリと笑う。どうやら今日は逃げ道はなさそうだ。
「…………頂きます」
諦めの境地で深く溜め息を吐くと、俺は自分の前に置かれてある杯をそっと手に取った。
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