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第57話

でもボクが言ったことで二人とも笑っているんだという事はわかったので、ぷくうっと頬を目いっぱいに膨らませた。 ―――ボクは真剣なのに……ッ すると煌騎は口の端を片方だけ上げボクのほっぺたを人差し指で突き、頬に貯めた空気をシュルルと抜けさせる。 「そう怒るな、別にお前の事を笑ったワケじゃない」 「そうだよっ、チィがあまりに愛らしかったから笑ったんだよ。ごめんね?」 そう言って二人は最上級の笑みで、拗ねたボクの機嫌を取ろうと頭を同時にグリグリと撫でた。その瞬間ボクの顔はみるみる間に真っ赤なトマトみたいになる。 二人とも完全に子ども扱いしているってわかっているのに怒る気にもなれず、何故か無性に胸のドキドキが止まらない。 今まで閉鎖的な環境にいた為に、これほど容姿の整った男の人など見た事がなかったからだろうか? そう考えると今更ながらボクは凄い環境にいるのだなと、改めて思い知らされたのだった。 「あ"~っ!? なかなか来ねーと思ったら二人して何してんだよ! チィ、こっちに来いっ!」 左隣のドアが勢い良く開いたかと思うと中から流星くんが出てきて、煌騎に抱っこされているボクをその腕から奪う。 しかし残念な事に彼は更に上をいく高身長な為、気分はさながら連行される宇宙人……。 やっと虎汰が執拗に自分の身長を気にするのかがわかったような気がした。そして何か勘違いをしたまま流星くんはボクを連れて左隣の部屋へと入る。 振り返り後ろを見れば、二人も何も言わず付いて来てるのでそのまま彼に従った。 中はわりと狭く、奥にはこの部屋に不釣り合いなほど立派なシステムキッチンと6人掛けのダイニングテーブル、それ以外は他に何もない。 キッチンは和之さんの好みなのか使い勝手を重視した男らしい、けれど黒を基調としたオシャレな造りになっていた。 流星くんの腕の中でポカンと眺めていると、既に席に着いて朝食を摂っていた朔夜さんと目が合う。 彼は食事の時もPCを手離さないようで、コーヒーを優雅に飲みながらカタカタと片手で操作していた。 「おはよチィ、例の洗礼さっそく受けたんだって?」 朔夜さんの何気ない一言にボクの肩がピクリと揺れる。怖くて振り向けないが次の瞬間、背後から人を殺せそうなほどの殺気がビシビシと伝わってきた。

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