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第62話

煌騎に抱っこされつつ虎子ちゃんと手を繋いで隣りに戻ると、何故か虎汰と流星くんがぎゃあぎゃあ騒ぎ出す。 彼らは口々に「チィを返せ!」とか「一人占め反対ッ!!」とか喚いていた。言ってる意味は分からなかったけど、何だか二人が可愛く見えて思わず笑みが零れる。 ソファに座ってPCを操作していた朔夜さんは、「お前らは小学生か」と言って半ば呆れていた。 煌騎は和之さんと大事なお話があるようで近くのソファにボクをそっと下ろすと、隣に立つ虎子ちゃんに「こいつを頼む」と短く言い置き奥の窓際にいる彼の元へ行ってしまった。 所在なく隣を見上げれば彼女はにっこり笑い、その間にボクの隣へ腰掛けようとしていた虎汰を透かさず押し退ける。 「いってぇ! 何すんだよ!!」 「アンタはあっちに座りなさいよっ、私とチィが並んで座れないじゃない!」 「何でお前に席譲らなきゃなんねーんだ! 座るなら虎子だけ向こうに座ればいいだろっ」 上から目線で言う虎子ちゃんに、ちょっとキレ気味の虎汰が反発する。それをムシして流星くんはボクの方に手を差しのべ、自分の横に座らせようとした。 だけどその手を虎子ちゃんは容赦なく叩き落とす。 「チィと私はもう一心同体なの! 一緒にいなきゃいけないの! 男のクセに席くらいでガタガタ言わないでよっ」 もはや意味不明なことを言い出した彼女は、有無を言わさず虎汰を向かいのソファに追いやり自分は真ん中に、その横にボクを座らせたのだった。 その後も暫くは虎汰と虎子ちゃんとの攻防戦が続いたけど、女の彼女に本気を出すこともできず、彼は泣く泣くボクたちに席を譲ることになったようだ。 そして向かいのソファに移動しようとした時、誰かがノックもなしにこの部屋のドアを開け放った。 「―――よぉっ、ここは相変わらず賑やかだなぁ♪ 」 そう言って入ってきたのは白衣を着た見た目20代後半ぐらいの男の人で、煌騎たちに負けず劣らず背の高い人だった。 彼は周りの空気も読まず、まるで何かを探すように部屋の中を無遠慮に見回す。 瞬間、あの屋敷にいた時の光景がフラッシュバックする。毎夜地下室に降りてくる複数の男の人たちと、目の前の人の姿が重なってビクリと身体が強張った。 ボクは咄嗟に傍にいた虎子ちゃんにしがみ付き、ガタガタと震え出してしまう。

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