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第61話

けれど虎子ちゃんがツツ~ッと横にきてボクの腕を取った。何かと思ってそちらを見ると、彼女はニッコリ笑って耳打ちする。 「昨日の夜はぐっすり眠れた?」 「―――うんっ」 その問いに笑顔で応え、あれから一度も起きる事なく朝を迎えたことを伝えると、虎子ちゃんは自分のことのように安堵して喜んでくれた。 昨日は女の子に囲まれたり、チームの話を聞いたりしたので色々と気に掛けてくれていたようだ。 思えば彼女にはお世話になりっぱなしのような気がする。 ちゃんと改めてお礼を言わねばと口を開きかけるが、それを予測した虎子ちゃんに止められた。 「お礼とか言うのやめてよね。友だちの心配するのは当たり前のことでしょ?」 そう言って屈託なく笑う彼女にボクは暫し目を奪われる。この子はなんてキレイに笑うんだろう……。 虎汰と同じ金髪の虎子ちゃんはちょうど窓から射し込む朝日に照らされ、まるで彼女自身が輝いているように見えた。 ん? でも待って、いま虎子ちゃんボクのこと友だちって言った? びっくりして彼女の顔をマジマジと見つめていると、虎子ちゃんはプッと吹き出し、それからコクンと小首を傾げた。 「なに、私たちはもう友だちだと思ってたけど……チィは違うって言うの?」 照れ隠しなのか鼻の頭を掻き、少し怒った風に口を尖らせる。そんな仕草も可愛らしいなと思ってしまった。 「……いいの? ボクなんかが友だちで……」 半信半疑で尋ねたら彼女は更に怒った顔をした。今度は鬼の形相だ。虎子ちゃんの表情はクルクルと忙しなく変わる。 「“私なんか”なんて言わないでっ、今度また言ったらぶっ飛ばすよ! つか、私はチィがいいのっ、他の奴らはお断り! わかった!?」 「……う…うん、ありがとう……虎子ちゃん」 物騒な事を言われ、頬を軽くツネられながら怒られているのにちっとも怖くない。 生まれて初めてできた友だち……。 それは温かくて優しい存在なのだとボクは初めて知った。泣き笑いのような顔になるボクを、抱き上げている煌騎は優しく包みながら小声で「良かったな」って言う。 だから何度もコクコクと頷いた。

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