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第64話
「いや、さっきの口振りだと健吾さんもチィのこと知ってる感じだったよな」
「あぁ、それから煌騎もな……」
冷静に状況を判断する虎汰に流星くんが頷いた。
そして二人は煌騎に鋭く怒気を含んだ視線を一斉に向ける。
「―――どういう事だよ、煌騎っ」
「……何もかも知ってて俺たちに黙ってたのかよっ!」
声を荒げる彼らの姿を見てボクは息を飲んだ。
時々ケンカはするけどとても優しくて、賑やかな明るい人たちなのに今は怖い。
そこにいたのは怒りに我を忘れた猛獣、まさしく“モンスター”だった。
「―――待て二人共ッ、先走るな!!」
そう言って間に入ったのは和之さんだ。
彼は少なからず煌騎から情報を得ているのか、他の皆よりは冷静だった。
「―――けどっ!?」
「……………あのさぁっ、」
尚も突っかかろうとする二人に、脇で静かに傍観していた朔夜さんが口を開く。そのどこか冷めたような声音に、虎汰たちの動きがピタリと止まった。
そんな二人を気にも留めず、朔夜さんはソファに座ったまま無表情に言葉を続ける。
「何を熱くなってんのか知らないけど最初は煌騎、本気でチィの正体に確信が持てないみたいだったよ? そんな事も分からなかったなんて、友達甲斐のない奴らだな」
そう言って二人を嘲笑うように見上げた。
流星くんたちは互いを見合って茫然と立ち尽くす。どうやら思い当たる節があるらしく、彼らは渋い顔をして黙り込んだ。
「二人がそれ程バカじゃなくて助かったよ。まぁ立ち話も何だしとりあえずみんな座ったら?」
静かになった二人に辛口の嫌味を零しながらも、朔夜さんはさりげなく白衣を着た男の人に自分の隣りに座るよう薦めた。
口数の少ない彼が今日はやけに多く喋る。それを見ていたボクは呆然としてしまう。もしかしたら影のリーダーは彼なんじゃないかと思ってしまったくらいだ。
すると隣りの虎子ちゃんがこっそり「あの二人、口では朔夜くんに絶対勝てないから逆らえないの」と教えてくれた。
成る程と納得していると、皆が座り始めて席が足りないことに気づく。
どうするのか見ていたら煌騎がボクを抱き上げ、そのまま一緒に一人掛けソファへと座った。
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