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第70話

温厚そうに見えて実は和之さんもかなりの武闘派なのかもしれないと、その時ボクはひっそりと思った。 そしてびっくりしながらもその光景を黙って見守っていると、ふと流星くんと視線が合う。 でも彼はアッと口を開けたかと思うと気まずそうに目を逸らし、小さくゴメンと呟いて消沈したようにソファに座った。 その様子を見て朔夜さんがクスリと笑う。 「お約束すぎ……やっぱお前、単細胞だな」 「うるっせーな朔夜ッ、放っとけよ!」 彼に揶揄されて流星くんは拗ねたようにそっぽを向いた。だけど先ほどの剣幕は嘘のように消え、ボクの知る彼に戻っていたので少し ホッとする。 「でもさぁ、じゃあ何でチィは健吾を知ってるの?」 ことの収拾がつくのを待ってから、虎子ちゃんがボクを見ながら静かに話し掛けてきた。 何らかの事情を知る二人は無言を貫き通したまま口を開かない。ならボクから何か情報が引き出せないかと彼女は思ったのだろう。 周りの視線もこちらを向いていた。が、ボクは尋ねられて初めて己のことなのに何も知らないのだと気付かされる。 悲しくなって何も言えず俯くと、煌騎が優しく頭を撫でてくれた。 「勝手な事を言ってるとは思う。だが無理に聞き出そうとしないてやってくれ。この子は今まで生きるので精一杯だったんだ」 そう言って健吾さんもボクを庇ってくれる。 二人とも優しくて胸がぎゅっとなった。 ボクは彼らに保護されてからずっと守られてばっかりだ。けどこのままじゃいけないと思った。知ってることは彼らに話さないと……。 そう思い意を決して顔を上げると、皆の顔を見回した。 「……あ…あの、ボク……健吾さん自身を知ってるんじゃないの。"ケン兄ちゃん”はボクの夢の中に出てくる空想の人で、物凄く似てたから夢と混同しっちゃって……だからその、ごめんな…さい」 「―――はっ!? えっ、じゃまさか……煌騎のことも?」 驚いてそう尋ねる虎汰にボクはうんと躊躇いがちに頷く。すると皆は増々わからないといった感じで一気に脱力し出した。 自分の話したことが満足の得られる情報ではなかったようで、ちょっとショックだったが本当のことだから仕方がない。 肩を落として落ち込んでいると、煌騎が不思議そうな顔をしてボクを見ていた。

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