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第72話

だけど彼らの真ん中にいる虎子ちゃんが、二人の背中をパシンッと容赦なく叩く。 「いい加減にしなさいよっ、グチグチ言ってアンタたち男でしょ!」 「…………お前ら、ホンット小学生以下だな」 フッと朔夜さんにまで鼻で笑われて返す言葉もなく、流星くんも虎汰もしゅんと落ち込む。 ボクは何だか可哀想になって声を掛けてあげたいと思うのだけど、何て言葉を掛けたらいいのか浮かばない。 一人オロオロしていると、和之さんに笑顔でこいつらは放っといていいからって言われた。 「―――それよりもあの話はどうなってるの、和之さんも朔夜くんも根回しはもう済んでるんでしょ?」 「あぁ、後は隣のこの人に承諾を貰えれば完了……」 興奮気味の虎子ちゃんにいつでも冷静な朔夜さんが淡々と答える。 でも意味不明な会話にボクが首を傾げていると、健吾さんが苦笑を浮かべて「あぁ、あの話か…」と呟いた。 「いいよ、チィの身元保証人は俺が引き受けよう」 そう健吾さんはまるで荷物を預かるような軽い口調でサラリと言った。 でも肝心のボクは言われた事が分からず、頭の上にたくさんのハテナマークを作る。 「―――え……な、なに?……どういう……こと?」 状況が呑み込めずキョロキョロと周りを窺うが、皆は既に健吾さんの了承が得られ歓喜に湧いていて、ボクの困惑の声など届かない。 途方に暮れていると隣の煌騎がクスリと笑い、詳細を事細かく教えてくれた。 朔夜さんは戸籍や住民票など何もないボクの為に、役所にハッキングして一晩掛けてそれらを偽造作成したらしい。 けれど未成年者をそのまま一人の枠に納めるのは不自然極まりないので、誰かの戸籍に入れてしまおうということになり、それに白羽の矢が立ったのが健吾さんだったというのだ。 彼は独身だし地元の人間ではないので、誰からも怪しまれないだろうという理由で選ばれたそうだ。 「帰る場所を見つけるまでの仮戸籍だけどね」 事も無げに朔夜さんは呟いたけど、それだけの作業をするのにどれだけの時間と労力を費やしたのか、ボクには想像も出来ない。 きっと彼だけじゃない。 ここにいる和之さんや流星くん、虎汰や虎子ちゃんもボクの為にいろいろと動いてくれているのだろう。 こうして分かるよう丁寧に説明してくれた煌騎だって……。 それを思うと胸がギュウウッと苦しくなった。

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