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第73話

「みん…な……あり…が、と……」 「フフッ、チィまだ驚くのは早いよ!」 両目いっぱいに涙を溜めてお礼を言うと、皆は一瞬驚いた顔をして、でも次の瞬間にはフッと表情を崩して笑った。 ニコニコ笑顔を浮かべる虎汰にそう言われ、えっ? と小さく声を上げると皆が更に笑顔を深めた。 そして虎子ちゃんが徐ろにぴょこっと席を立ち、ソファの横に置かれていた紙袋を手に取るとボクの所まで来てそれを手渡す。 少し躊躇ったがズシリと重みのある紙袋を受け取り、それをぎゅっと抱きしめてとりあえず彼女に感謝の意を述べた。 けど虎子ちゃんは何故かその場からは動かず、何かを期待する眼差しで見下ろしてくる。ボクは何かを忘れているのだろうかと狼狽えたけど、どうやらそうじゃないらしい。 「えと、…あの……?」 「チィ早くっ、それ、中の取り出してみて♪ 」 急に急かされてが戸惑いの方が大きかったが、周りの皆も虎子ちゃんと同様の眼差しを向けてきたのでそれに従った。 紙袋から出てきたのは新品の真っ白なブラウスと薄茶色のベスト、襟の所に白のラインが1本入った紺色のブレザーとズボン、それから白と薄い黄色の斜めストライプ柄のネクタイまで出てきた。 しかも何でかすべて二着ずつ揃っている。これは一体何なのだろう? お洋服なら昨日いっぱい買って貰った筈なのにな……。 「これ、私たちの通ってる学校の制服なんだよ?」 「……学校、…制……服……?」 “それが何故ここに?” そう思うのに頭が混乱して言葉が続けられない。 ボクは変わらず茫然とした顔で彼女を見上げた。 「チィの体調が良くなったらさ、皆で一緒に学校通おうね!」 「………………」 キラキラ輝く笑顔で言われても、ボクはやっぱり意味がわからずボケッとする。 『これ私たちの通ってる学校の制服なんだよ?』 『皆で一緒に学校通おうね!』 あれ? 学校っていっぱいお友だちが作れる所だっけ。お勉強もするんだよね? うんっ、とっても楽しそう! それを想像したら顔がふにゃんって緩んでしまった。そしたら皆がクスクスと一斉に笑い、流星くんが満面の笑顔で言う。 「俺らその顔が見たかったんだ♪ 」 「……苦労も吹き飛ぶ」 「………う?……ぁ……っ」 珍しく朔夜さんまでが笑ってボクの顔を見つめる。そこで漸く虎子ちゃんたちの言ってることを理解した。

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