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第74話

凄く嬉しいのに急に目頭が熱くなって、煌騎の胸にボスッと勢い良く抱きつく。 「………チィ?」 突然の行動に驚く彼と周りの皆……。 でも顔を上げられなくて目の前の厚い胸にぐりぐりと頭を擦りつけていると、健吾さんがクスリと笑った。 「チィは嬉しすぎてどう表現すればいいのかわからないだけだよ」 「あぁ、なんだ……びっくりした。チィ学校に行くの嫌なのかと思ったよ」 「―――ち、違うよっ!?」 安堵してぼそりと呟く虎汰にボクはバッと慌てて顔を上げ、それを断固として否定した。 だって行きたくないワケがない。 ずっとずっと“学校”という所に行くのを夢見続けていたのだ。でもどんなに望んでもその願いは叶わなかった……。 一度だけボクの“管理者”という人に行きたいと頼んでみたことがある。だけど言った瞬間もの凄く後悔した。 何故なら次の瞬間にはボクの身体は宙を舞い、地下室の壁に叩きつけられていたから……。 そして泣いて許しを乞うまでボクは“管理者”の人に蹴られたり殴られたりした。 『お前如きが学校に行きたいだとっ!? 何様のつもりだっ、何の役にも立たないクズのクセに! お前は黙って男に脚開いてればいいんだよッ!!』 そう罵られながら……。 その後、複数の男の人が地下に降りてきてまた気を失うまで犯され続けた。 手当ても何もされず放置され、枯れた筈の涙を零しながらもう二度と自分から望みは言わないと心の中で誓った。 ―――でも本当はたった1度でいいから“学校”に行ってみたかった……。 昔のことを思い出してしまったからか、両目からは勝手にぽろぽろと涙が溢れてくる。 早く止めなくちゃと思っても、それは直ぐには止まってくれない。両手で瞼を擦ろうとしたら、煌騎にそっと腕を取られ制止させられた。 「………ムリに止める必要はない」 そう言って背中を優しく撫で、ボクの身体をぎゅっと抱き締めてくれる。 やっぱり煌騎の腕の中は落ち着くと思った。ボクはもう彼なしでは生きられないのかもしれない。おずおずと彼の背に腕を回しながら瞳をゆっくり閉じる。 暫くすると眠気を誘うように背中をぽんぽんとされ、抵抗する間もなくボクは夢の世界に吸い込まれていったのだった……。

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