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第79話〜幸せを噛み締めて〜

「……ねぇ煌騎……ねぇってば、朝だよっ、起きて?」 早朝5時23分、昨日から興奮気味のボクは夜遅くに眠りについたのにも関わらず、もう目が覚めてしまっていた。 することもないので上半身を起こし、隣に眠る煌騎の身体をゆらゆらと揺らしてみる。 「………ん……チィ、早過ぎる…もちょっと、寝てろ……」 「―――あうっ、どして……!?」 瞬く間に煌騎の腕に捕まったボクは、強制的に再び布団の中へと引き戻されてぎゅうっと抱き締められた。 今度は逃げられないようしっかりとその腕に力を籠められ、身動きひとつできない。 仕方なく大人しくなったボクは煌騎の胸に耳を寄せ、彼の心音を子守唄代わりに聞くことにする。 煌騎の心音はとても心地が良い……。 どんな時も一定のリズムを刻み続ける彼の心音は、ボクにとって安定剤のような役割を持っていた。 こうして聞いているだけで心穏やかになっていくのだから不思議だ。 静かになったボクを褒めるように背中を撫で、煌騎はまた小さく寝息を立て始める。 ――煌騎が起きてくれないとつまらない……。 ぷくっと頬を膨らませてはみたものの、昨夜はしゃぎすぎて夜更かしを付き合わせてしまったのだから文句は言えない。 起こすのは諦めてボクはまた彼の心音に耳を傾ける。 昨日はあれから直ぐに目が覚め、昼からは皆に学校へ行く為の心構えを学んだ。 朝は『おはよう』で帰りは『バイバイ』、挨拶は大きな声で元気良くするといいらしい。 そして話し掛けられたら笑顔で受け答え! 何を話してるのかわからなくてもニコニコ笑っていれば、大抵のことは回避できると虎子ちゃんが教えてくれた。 但し男の子は危険なので、話したり笑い掛けたりしちゃダメだよって虎汰には注意を受ける。 男はみんな狼なんだよ!って言われてボクは最初、言葉の通りに取ってしまってびっくりした。 横でクスクス笑ってる虎子ちゃんを尻目に「じゃあ虎汰たちにも笑い掛けちゃダメなの?」って聞いたら、「俺たちは絶対チィに危害を加えないから大丈夫だよ!」って返してくれたのでとりあえずホッと息を吐く。

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