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第81話

「―――いいのっ!?」 「俺ももう目が覚めたしな。それに昔、何かの本で小動物は“お預け”を教えるのが難しいって読んだ記憶がある」 「むうぅっ、ボクは小動物じゃないもんっ!」 せっかく心から喜んだのにまた茶化されて素直にお礼が言えなくなる。煌騎は時々ホントにイジワルだ! でも直ぐにウソだと言われ、宥めるように頭をいい子いい子されたから機嫌は直った。 「今朝は何が食いたい? 今ならまだメニューの変更が効くんじゃないのか」 サイドボードの上にある時計を見ながら煌騎が言い、ボクはトロンとなっていた顔をぴょこんと上げる。 たぶんボクに動物のような耳があったなら、その声に反応してピクピクと動いていただろう。 「―――昨日のオムレツ! ボクあれが食べたいっ」 「そうか、だが和之の事だからそれはもう朝の献立に入ってると思うぞ?」 嬉々としてリクエストを唱えれば、煌騎は堪らずといった感じで吹き出した。あまりに興奮し過ぎて彼の服の袖をぎゅっと掴んだので、その姿が可笑しかったらしい。 けれどボクの頭の中は既に和之さんのふわトロオムレツの事でいっぱいだった。 早速(さっそく)煌騎に催促して食堂へ連れていって貰う。 「―――アレ、チィもう起きちゃったの?」 食堂に入るなりやっぱりというか、一人朝食の準備をしていた和之さんに驚かれてしまった。 彼はワザワザ作業の手を止めてキッチンから出てきてくれ、短くおはよと告げてボクの頭を撫でる。 「もしかして、昨日の夜は興奮して寝つけなかった?」 「ううん、ちゃんと寝たよ!」 「ふーん………本当に?」 「…………ちょっと……だけ」 「なるほど、()()()()()()……ね」 隣の煌騎をチラッと見て、和之さんは少し顔に同情の色を滲ませクスリと笑う。こっそり彼に目配せし、「お疲れ」と声を出さずに労いの言葉を掛けた。

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