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第83話

煌騎に連れられてドアの前まで行くが、良いアイデアを思いついて「ちょっと待って」と声を掛け脚を止めて貰った。 「和之さんっ、ボク……お手伝い……する?」 「あー、まだ朝食までには時間があるから一人で大丈夫だよ。でもありがとう♪」 和之さんは苦笑気味にそう言う。その顔を見てショボーンとなってしまった。やっぱりボクは何の役にも立たないのかな、せっかく早起きしたから今日は手伝えると思ったんだけど……。 でも諦めきれず尚も言い募ろうとしたら、煌騎にやんわりと止められた。 「チィ、もういいだろう? 向こうへ行こう」 「…………でもぉ……」 「台所は和之の領域だ、邪魔したら悪いだろ?」 お願いすればお手伝いさせて貰えるかもと期待していたけど、煌騎に間髪入れずそう言われたので仕方なく諦める。 部屋を出る際に未練がましく上から和之さんを見ると、彼は爽やかな笑顔で手を振っていた。 「どしてボク、お手伝いしちゃダメなの?」 そっと三人掛け用のソファに降ろされながら、ぼそりと独り言のようにだけれど抗議の声を上げる。 せめてもの抵抗のつもりだったけど、声が小さ過ぎて煌騎にはまったく届かなかった。 彼は向かいのソファに座ると横になり、長い脚を肘掛けの上に乗せて頭の上では腕を組み、すっかり仮眠を取る体勢に入る。 それを見てボクは焦ってしまった。煌騎が眠ってしまったら一人ぼっちになってしまう。 孤独を感じるのはもうイヤなのに……っ。 ボクは身体を起こすとガラステーブルを伝って煌騎のところまで行き、彼のお腹の辺りに股がると上半身に勢い良く覆い被さった。 「ごめんなさいっ、煌騎ごめ…なさっ………」 「―――えっ、」 「もっ、我儘言わなぃっ…から、うっ…ヒック……ひとりにしないで……お願ぃ、煌騎……ひとりはヤダ……ぅぅぅっ」 「……………チィ」 ポロポロと泣いて縋るボクに煌騎は一瞬言葉を失い、少し戸惑っていたけれど直ぐに穏やかな表情になり優しい笑みを向けてくれる。

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