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第84話

そして上体を起こすとボクのズレ落ちてしまいそうな身体をぐいと引き上げ、自身の下腹部にちゃんと座らせてから抱き締め労るように背中を擦ってくれた。 「チィすまなかった、お前をひとりきりにするつもりはなかったんだが……。もしまた孤独を感じたら今みたいに直ぐ俺の所へ来い。いつでも抱き締めて安心させてやるから、な?」 「………うんっ……うんっ、煌騎ッ……煌騎…ッ」 幼子をあやすように言われ、発作の時のようなざわついた気持ちが徐々に落ち着いていく。 何度も何度も頷いて煌騎の存在をその腕で確かめた。 彼は一度口にした約束は何があっても必ず守ってくれる。だからもう何も心配することはない。そう自分に言い聞かせる。 それでも1度芽生えた胸の奥にある不安は一向に消える事はなくて、ボクは必死に彼の胸元に顔を擦り寄せた。 すると煌騎はその不安を取り除くようにボクのおでこやこめかみの辺り、瞼の上や頬にたくさんの口付けの雨を降らせてくれる。 それは擽ったいのにとても気持ちが良くて、顔を見上げたら彼と目が合って照れ臭さにはにかんだ。 でも止めて欲しくはなくて強請るように潤んだ瞳で見つめ返せば、真剣な眼差しをした煌騎の顔が近づいてきてそのまま唇を重ねられた。 何度かちゅっちゅっと啄まれて、トロンと瞼が落ちてきたら下唇を舌で擽られる。無意識に口を開いたら彼のそれが入ってきて、上顎や歯列を嬲るようにされた。 「……んっ……んぅ……ふぁっ…ンん……」 熱い舌が心地良い。舌を突き出して絡め合っていると、煌騎の口角が緩く上がった。 (彼も気持ち良いと思ってくれてたらいいのに……) でも現実はそうじゃない。だってこれは前回の発作の時みたいに、ただボクの気持ちを落ち着かせる為にしてくれているものだから……。 煌騎は優しい。拾っただけでこんな手の掛かる役立たずなボクに良くしてくれる。そんな彼にいつまでも甘えてゃいけないって分かっているのに、心の弱いボクは止められないでいた。

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