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第92話
次の日目を覚ますと、隣にはやっぱり煌騎がいた。ボクの髪を優しく梳きながら穏やかな表情で此方を見てて、でも目が合うと照れくさそうにその手を止める。
ちょっと寂しかったけどそれよりも彼の目が赤く充血しているのに気づき、夜通し傍にいて看病してくれたのだと知った。
「煌騎、あの……ごめ…なさっ……」
「フッ、お前は本当に謝ってばかりだな。それより熱、ちょっと下がったみたいだから起き上がれるようならメシ……食うか?」
「……メシ…メシ……んと……あ、ごはん?」
「そうだ、和之がお粥作ってくれてる」
そう言って枕を背に当てて上半身だけ起こしてくれた煌騎は、サイドボードの上に乗せられたお盆から小さなお椀を取り、お鍋から中身をよそってスプーンを添える。
それをボクに手渡してくれるのかと思ったけど彼はそのまま隣に腰掛け、お椀の中のお粥にフーフーと息を吹き掛け始めた。
「……う?…煌騎、あの……」
「食べさせてやる。ほら、口開けろ」
「自分で食べれ…んむっ……んン……」
有無を言わさず煌騎に無理やり食べさせられ、ちょっと恥ずかしかったけど真剣な眼差しで見つめ返されたら、それ以上は何も言えなくなる。
だけど2口3口と食べ進めた所でボクはもう食べられなくなった。もっと食べたいのに身体が受け付けないのだ。
申し訳なく彼を見上げると煌騎はボクの頭を撫で、気にするなと声を掛けてくれた。
「食うにも体力使うからな、仕方ないさ。それより薬飲んでもう少し寝ろ。次に目を覚ました時は今よりマシになってる」
それにコクンと頷くと手に何種類かの錠剤と水の入ったコップを手渡され、彼に促されるままそれらを飲んだ。
すると暫くしたら薬が利いてきたのか眠たくなってきて、ボクは煌騎にぎゅっとしがみつきながらまた眠りにつく。
それを何度か繰り返した5日目の朝、連日連夜続いた熱もウソのように下がり、ボクは漸くベッドから出る許可を貰ったのだった。
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