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第94話

何の話をしているのか分からず左右に首を傾げてると、煌騎がボクの忙しなく動く頭を大きな手で強制的に止めた。 「お前は気にしなくていい、どうせあいつらの日頃の行いが悪いのが原因だ」 膝の上にボクを乗せた状態で彼はそう言って頭を撫で続けてくれる。納得はできなかったけど彼が気にしなくてもいいと言うから、素直に今聞いた話は頭の外へと追いやった。 そして皆で食堂に行き、和之さんの美味しい朝食をお腹いっぱいに食べたのだった。 「ボク……も、食べれません」 リビングに戻ってきて、片手で煌騎の首にしがみつきながらもたれ掛かりそう呟く。 そしたら流星くんがぶはっと笑い出して身を乗り出し、ボクの頭をくしゃくしゃと撫でた。 「食べられる量も増えたもんな! けど病人食は食った気がしなかっただろ、今朝のは美味かったか?」 「うんっ、とっても美味しかった!」 うふふと笑って今日の朝のメニューを思い出す。ボクのお気に入りのふわとろオムレツと昨日の残りだというカボチャの煮付け、それに緑色のブツブツがついた苦いお野菜の炒め物とアスパラっていうのにベーコンをグルグル巻きにしたやつも美味しかった。 本当は今朝もボク用にお粥を用意して貰ってたんだけど、虎汰たちのを見て食べたくなってしまったのだ。 溢れ出す唾をゴックンて飲み込んでたら和之さんがクスクス笑い、皆のプレートから少しずつおかずを取り分けてボクの分を用意してくれた。 だから代わりにボクのお粥もおすそ分けしてあげたら、皆にとっても喜んで貰えた。 「食欲が出てきたならひと安心だな。まぁ免疫力が低下してるから油断はできないけど……」 食器を洗い終わった和之さんが長くて黒いエプロンを外しながら、自分の定位置に腰を下ろし話し掛けてくる。 そして静かにボクの前のテーブルに薬と水の入ったコップを置かれた。 「う?……ボクもうお熱下がったよ?」 「そうだね、でも処方されたお薬は全部飲み切らなきゃいけないんだ。頑張って飲めるかい?」 「うんっ、ガンバる! でもボクのお腹、パンクしちゃわないかな?」 「あはは、しないしない♪ ほら頑張って飲んで?」 膨れたお腹を擦りながら言ったら、何故か和之さんだけでなく皆がクスクス笑い出す。 ボクは真剣に聞いたんだけど……まぁいっか。 手を伸ばしてそれらを取ると口に含み飲み干した。

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