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第96話

先ずはペットボトルに五分の一ほどお湯を注ぐ。それから線香にライターで火をつけ、斜めにしたペットボトルの入口に差し込んで少しだけ煙を入れ直ぐに蓋をした。 それを和之さんはボクに手渡してくれる。 「はい、後はチィに任せるよ。テーブルの上に立ててペットボトルの真ん中辺りを両手で持って、ペコンとへこませてみて?」 「……ペコン……こ、こう?」 ボクは煌騎の膝から降りると床にペタンと座り、言われた通りペットボトルをテーブルの上に置いたまま両手で握ってペコンと音を立ててへこませた。 そしたら今度は虎汰に「パッと離して!」と言われ慌てて手を離す。すると中に白い靄みたいなのがもわんと発生した。 「……あっ!? 煌騎ッ、なんか白いの…出た!」 「うわ~、言葉だけ聞いてたら卑わいなソレ」 「流星ッ、お前は黙ってろ!!」 「ーーー痛ッ、」 流星くんと虎汰が何か言ってる気がするけど、興奮してるボクは今それどころではなく、後ろを振り返って煌騎を見遣る。 すると彼は穏やかに笑っていて、ボクを優しく見守ってくれていた。 「チィ、何回かそれを繰り返してみろ」 「うんっ!」 嬉しくなったボクはコクンと頷き、また前を向いてペコペコとペットボトルの真ん中をへこませる。 その度に中の靄はハッキリとしていき、お空のよりはだいぶ薄いけれど、立派な雲がペットボトルの中に現れた。 「…………これが……お空の雲……?」 「まぁ、原理は同じだ。流石にまったく一緒というワケではないだろうが……」 そう教えてくれる煌騎に深く頷き、興味津々でペットボトルの中を覗き込む。それからボクはそれを持ったまま立ち上がると、トテトテ窓の側まで行きお空の雲と何度も見比べた。 けれど段々気分が沈んでいき、終いには下唇を噛んで俯いてしまう。 その様子を見た和之さんや流星くんらは首を傾げ、「どうしたの?」と気遣わしげに声を掛けてくれたけど、何かが腑に落ちなくてもやもやする。 「…………チィ?」 心配して朔夜さんがお名前を呼んでくれたのに、ボクは喉の奥が詰まってお返事ができない。 さっきまではあんなにはしゃいでいたのに、その唐突なボクの異変に皆は戸惑っていた。

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