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第98話

急遽その日の午後からボクのお勉強会が始まった。といっても学校で習うような難しいお勉強ではなく、世間一般の常識なんかをこれから皆に教わるらしい。 緊張から少し身構えていたボクに、和之さんはそう説明してくれた。 「つってもなぁ、その“一般常識”って例えば何から教えたらいいんだ?」 「ははっ、お前がもっとも苦手とする分野だな」 腕を組み深く考え込んで唸るように言う流星くんに、向かいの虎汰はちょっとだけ小馬鹿にしたような眼差しを向ける。 流星くんはすぐにムッとしたけど、ボクの方をちらりと見てグッと言葉を噤んだ。すると虎汰もハッとボクを見てバツが悪そうに"ごめん”と謝ったのには驚いた。 「どしたの二人とも、成長したじゃない。まぁけどチィが何を知っていて、何が欠けているのかその見極めは必要かな」 「確かに……、じゃあこうしよう! 皆はチィの行動に注意を払い不審を抱いた時点で理由を尋ね、常識と掛け離れた考えをしていればこまめに教えてあげるのと、チィの方は少しでも疑問を感じれば皆にその都度質問するってのでどうかな」 「うん、いいんじゃない?あまり急いで詰め込み過ぎると却って良くないしね」 朔夜さんと和之さんとが話し合ってそう結論付けると、ボクは黙ってコクコク頷く。これ以上は皆の手を煩わせちゃいけないと思ったから……。 結局その日はお勉強らしいお勉強もせず、夕方から倉庫にやって来た虎子ちゃんと楽しくお喋りして終わった。 その翌日もまたその翌日も似たような感じで日々が過ぎていき、ボクがこの倉庫に来てから2週間が過ぎた頃ようやく変化が訪れる。 といっても、その変化はボク自身が起こしたものなんだけど……。 「んしょっ……あと…も、ちょっと……よいっしょ」 今日は昼から倉庫には誰もいなかった。 正確には下の階にチームの誰かしらはいるらしいんだけど、ボクと面識のある7人は今の時間いない。 朝から和之さんと朔夜さんは用事があるとかで一緒に出掛けて行ったし、虎汰と流星くんは昼からチームの人に呼ばれて倉庫を飛び出して行った。 虎子ちゃんや健吾さんも今日はまだ来てない。 そんな中煌騎だけは常にボクの傍にいてくれたけど、3時のおやつをボクに食べさせた後お昼寝するべく寝室へ連れてってくれたのに、彼の方が先に寝ちゃったのだ。

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