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第100話
ボクは瞬く間に片手で抱っこされ、険しい顔で怪我がないか埃を落としながら全身隈なくチェックされる。
そして怪我がないと分かると煌騎は表情を緩め、ホッと胸を撫で下ろしたけど直ぐに強めの口調でボクを怒鳴った。
「急にいなくなるなっ、まだちゃんと脚が動かせないっていうのに何処へ行こうとしてた!」
「ひっ、ご…ごめんなさ……ボク、ボク…うぅっ」
鋭い顔付きで覗き込む煌騎に驚いたボクは、目を見開き見る見る間に瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく。
それを見た彼は慌てて空いているもう片方の手で自身の顔を覆い隠し、息を深く吐き出してからその手を外してボクの背中をポンポン擦りながら叩いてくれた。
「………チィ、俺は別に怒っているワケじゃない。お前が心配だっただけだ。声を荒げてすまない」
上目遣いで恐々と顔色を覗けば煌騎はもう怒ったような顔はしてなくて、眉尻が下がってちょっと困った顔をしている。
ボクは本当に彼に心配を掛けたんだなと思い、ただただ申し訳なくて涙が止めどなく溢れた。
「……ごめ…なさいっ……ヒック、煌騎…ホント…に……ごめんな…さい……」
「チィ、俺は怒ってないから……もう謝るな」
そう言って煌騎はまるで壊れ物でも扱うように優しく抱き締めてくれる。それにようやく安堵したボクは、更に彼の首元へ縋るように抱きついた。
「………それで、チィは何処へ行こうとしていたんだ?言えば俺が連れて行ってやったのに」
涙がやっと止まった頃、リビングのソファで煌騎は膝の上に座るボクの顔を覗き込みながら尋ねてきた。
そう言われると思ったから内緒で抜け出したとは流石に言えず、煌騎の黒いシャツの裾を握り締めながらモジモジする。
すると真横から小さな息を吐く音が聞こえ、過剰反応したボクの肩がピクンと跳ねた。
「あのっ……あのね…うんと…えと…んと…っ」
もう怒られないと分かっているのにどうしてか、身体が条件反射で勝手にビクビクしてしまう。そんなボクを煌騎は根気強く背中を撫でて落ち着かせてくれた。
「チィが話したくないなら無理に話さなくてもいい。ただ……なんの前触れもなく俺の前から消えるのだけはやめてくれないか、頼む」
「………う、うん…分かった。ごめんなさい煌騎」
彼はクスクスと笑ってボクの頭をポンポンし、でもそのお顔はとても悲しそうでボクのお胸がキュウウゥッて苦しくなる。
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