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第104話

でもホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、前方に座る虎汰が凄い剣幕で虎子ちゃんを非難し出す。 「おいっ、チィを乱暴に扱うなよッ!!」 「ハァッ!? バッカじゃないのっ、チィは男の子なんだからこれくらいで壊れたりしないわよ! 過保護なのも度がすぎるとその内嫌われるんだからね!!」 「―――なっ!?……くっそ~!」 妹に痛いところを突かれ言葉を失う虎汰……。 言い返したいのに出来なくて、隣の流星くんの肩にしがみついて八つ当たりしている。 そんな彼を無視して虎子ちゃんは澄ました顔で、空いている和之さんの右隣に腰を下ろした。L字の角席で窮屈そうだけど、虎汰たちよりはボクに近い席を確保し彼女はご満悦だ。 今日も虎汰は言い負かされて可哀想だったけど、これも兄妹として生まれてきた宿命なのだと煌騎に教わって以来、ボクはそっと見守るだけに留めている。 それから車は何事もなかったかのようにゆっくりと走り出した。車中では虎子ちゃんや流星くん、途中から元気を取り戻した虎汰に学校の様子を詳しく教えて貰った。 昨日の夜も散々聞いていたのだけれど、待ち遠しくてボクから強請ってしまったのだ。そうやって楽しく時間を過ごしていると、学校と思われる建物の一部が遠くの方に見えてくる。 まだ結構な距離があるというのに随分と大きな学校だ。期待を胸にワクワクしていると、外が段々と騒がしくなってきた。 何かと思って窓の外を見れば歩道には黒い人集りができていて、規則正しく列を成している。 中にはボクたちと同じ学校の制服を着ている人たちもいて、あちこちで何かがピカピカと光っていた。 「ね……ねぇ、アレは……なに?」 「ん? あぁ、アレは一般の白鷲ファンの子たちよ。ああして毎日飽きもせず、登下校に合わせてここで出待ちしてるの」 「……出…待ち?」 聞き慣れない言葉にボクは首を傾げる。 もちろん意味はなんとなく分かるけど、何の為にそうしているのかが分からない。 すると流星くんたちが辟易したように深い溜め息を吐いた。その様子に知らずゴクンと息を呑み込む。 でも虎子ちゃんは明るく……、 「アイツら許可もなしに無断で写メ撮ったりするけど、一応は無害だから……。ただ遠くから見て騒いでるだけでカワイイもんよ」 と言ってさりげなくボクの不安を取り除いてくれた。

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