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第106話
そうこうしている内に車は昇降口の手前で静かに停車する。現金なボクは途端に考えるのを止め、そそくさと膝の上に置いていたカバンを胸にぎゅっと抱き締めた。
降りる準備は万端ッ!!
初めての登校にもう胸がいっぱいだ。
ドキドキが止まらない。まだかまだかと待っていると、まずは虎汰と流星くんがゆっくり腰を上げた。
「チィ、打ち合わせ通り危なくなさそうなら呼ぶからちょっとだけ大人しく待ってろよ?」
流星くんはそう言うとボクの頭をポンポンと軽く撫で、虎汰と共に先に車から降りていった。
だけどドアを開けて彼らが一歩足を踏み出した瞬間、外からは女の子の悲鳴に近い歓声が一斉に沸き上がる。
ボクはビクッとして何が起こったのか、尋ねるように煌騎の顔を仰ぎ見た。でも彼は外にあまり興味がなさそうに深い溜め息を吐ついて、ボクに大丈夫だと言ってくれる。
そして外は気にしなくてもいいとも……。
なのに横から虎子ちゃんが『チィも外出る時は気をつけなさいよ♪ 』と少し脅すように言った。
ボクは心の中で『なにを?』と思ったけど、続けて和之さんと朔夜さんも車から降りて更に外が騒がしくなったので、そちらに気を取られてしまう。
外では一体何が起こっているのだろう……?
先ほどとは違う意味でまた胸がドキドキしてくる。
ビクビクしながら煌騎の腕にしがみつくと、彼は反対側の手で優しくボクの頭を撫でてくれた。
「大丈夫だ、お前は俺が守るから……」
「フフ、私たちのことも忘れないでよ?全力でチィのこと守っちゃうんだからね♪ 」
「う……うん、ありがと」
二人の自信に満ち溢れた言葉に漸くざわついた心が落ち着く。にっこりと笑えば煌騎も虎子ちゃんも穏やかに笑い返してくれた。
するとそれを見計らったように外からボクを呼ぶ声が聞こえる。その声は和之さんだった。
「もういいよチィ、出ておいで♪ 」
それを合図に隣の煌騎に出てもいいか確認すると、静かに頷いてくれる。そしてゆっくり立ち上がると繋いでいた手をぐいっと引き、そのままボクをドアまで導くと先に彼から車を降りた。
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