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第107話

その瞬間、またもや女の子の悲鳴に近い歓声が沸き起こる。―――が、ボクの姿を見つけるなり彼女たちの声色は一変した。 「―――え、ちょっ……何あの子、誰ッ!?」 「……ウソ、あの煌騎さまと手を繋いでるっ」 「白鷲の幹部メンバーの方々と一緒に登校するだけでも許せないのに、煌騎さまと手を繋ぐなんてッ!!」 車の周りを取り囲むたくさんのギャラリーの中から、女の子たちが口々にそう言っているのが聞こえる。 当然の事ながら彼女たちからは強い嫉妬の眼差しを向けられた。その容赦ない視線にボクは少し怖じ気づく。 咄嗟に目の前に立つ煌騎の袖を握るも、直ぐさま沸き起こるブーイングに慌てて手を引っ込めた。 「チィ、周りは気にするな」 「う……うん、……でも…あの……」 「………ん?」 煌騎は気遣うように顔を覗き込んでくれたが、ボクは上手く笑い返すことができない。今更だけど自分が人に対して恐怖心を抱いてしまうのをすっかり忘れていた。 じわじわと背中には嫌な汗が流れ、瞳は涙が溢れてきそうになるけど、これ以上は皆に迷惑を掛けたくないのでぐっと堪える。 「な、なんでも…ない……」 ボクは小さく首を横に振って懸命に笑顔を作った。 本当は笑うのも辛い。上手く呼吸ができなくて立っているのもやっとだ。それでも煌騎とずっと一緒にいたかったから、誰にも悟られないように頑張った。 「―――茨 チィさん……ですね?僕は生徒会長を務めています、鮎川(あゆかわ) (かおる)と申します。初めまして」 「………う?」 気がつくといつの間にか虎汰くらいの背の高さの男の子が、男女数名の生徒を引き連れてボクの目の前に立っていた。 先頭に立つ彼はまるで日本人形のように手入れの行き届いた黒髪をしており、肩で下で揃えられた髪を後ろへさらりと払えばふわりと花の香りが辺りに漂う。 ボーッとしていたボクは今の状況がわからず、唐突に話し掛けられて返事を返すことも忘れて鮎川と名乗る彼の顔を見上げた。

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