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第112話〜ボク迷子になっちゃった?〜
「………あう? 虎汰…いない……」
昇降口で煌騎たちと別れた後、ボクは虎汰と虎子ちゃんに連れられて理事長室へ向かっていた。
だけど途中で緊張からかどうしてもトイレに行きたくなって、一階の来客者専用のトイレへ立ち寄って貰ったのだ。
でも中へ入った途端、入口付近で待ってくれていた虎子ちゃんのスマホが鳴った。
それは急を要する電話だったらしく、彼女は声を荒らげながら虎汰と言葉を交わすと、ドア越しにボクに向かって叫ぶ。
『チィッ、私ちょっと此処離れるけど外には虎汰がいるから! 絶対一人で彷徨かないでよッ!!』
『う……うん、わかったよ虎子ちゃんっ』
声の感じから緊急事態と悟ったボクは素直にそれを聞き入れる。彼女を引き留めるような虎汰の声も微かに聞こえたけど、トイレに入っている為それはよく聞き取れなかった。
昨晩から煌騎にも決して一人になってはいけないと釘を刺されていたので、用を済ませると慌ててボクも外に飛び出す。
でも廊下には虎汰どころか誰の姿も見当たらず、こんな時の対処法は教えて貰っていなかったボクは軽いパニックに陥った。
「ど、どうしよう……ボク一人ぼっち…なっちゃいけないって言われてたのに……んと、んと、」
心細くて辺りをキョロキョロ窺うが、今の時間はシンと静まり返っていて誰一人としていない。
けれどこのまま一人でいる訳にもいかないので、とりあえずボクはまだこの近くにいるだろう虎汰を探すことにした。
この時は直ぐに見つけられると思っていたのだ。だけど探すと決めたものの、初めて来た場所なので右も左もわからない。
人が居そうな所を探してトボトボと歩くも、何故か寂れた雰囲気の場所に出てしまう。
気がつけばボクはいつの間にか元いた場所から、随分と離れた校舎裏近くまで来てしまったようだった。
「やっぱりさっきのトコ、右に曲がった方が良かったのかなぁ……」
まるで迷路のような校舎内に溜息しか出ない。
ここへ来るまでには何度か行き先の選択を迫られる場面があった。
けどボクの頭の中に階段を登って上へ行くという発想はなく、ただひたすら一階をぐるぐるとさ迷っているような感じだった。
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