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第117話
謝って済む問題ではないのかもしれないが、今も囚われの身のボクにはそれくらいしかできることがない。
自分は本当に無力だとこんな時に痛感する。
でも後方に立っていた朔夜さんが渋い顔で首を横に振った。
「チィが謝る必要は何処にもない。こいつらの策略で虎汰たちから故意に引き離されたんだから」
「………う? それ…どういう……ことぉ?」
朔夜さんに告げられた言葉に驚き、ボクはパチクリと瞳を見開いてしまう。全て自分が悪いのだと思っていた。
だって幼い頃からボクは存在自体が諸悪の根源なのだと、そう何度も教え込まれていたから……。
だから外へ出る事も禁じられたのだというのに、朔夜さんはボクの所為ではないと言う。
「―――チィッ、大丈夫かッ!?」
その時、彼らの更に後ろから流星くんに肩を支えられた虎汰が現れた。しかし彼は誰かに殴られたのか顔の半面を少し腫らし、口端からは血も流れている。
そしてその横には彼を支えながら涙を浮かべる虎子ちゃんの姿もあった。
「―――虎汰ッ!? 虎子ちゃんッ!?」
「チィ、ごめん! 私がコイツらの策略にまんまと嵌まっちゃった所為でこんな事にッ!!」
虎子ちゃんは涙を堪えながら説明してくれた。
あの時掛かってきた電話は彼女が所属するチームの仲間からで、何者かに奇襲を受けて助けを求めるものだったらしい。
けれどそれ自体が罠で直ぐに現場へ駆けつけようとした虎子ちゃんは、虎汰の目の前で何者かに拉致されそうになったのだという。
身内の危機を目の当たりにした虎汰は、咄嗟にその場から離れ直ぐさま彼女の救出に向かった。――が、思った以上に人数が多かった為に片付けるのに時間が掛かり、戻ってきた時にはもうボクの姿はなかった。
恐らく別の手下が先回りし、兎を狩るようにジワジワと追い詰めてここへ誘導したのだろうということだった。
「私のせいでチィに怖い思い、いっぱいさせたよね! ホンットごめん!!」
「―――違う! 俺がいけないんだッ!! 俺がチィの傍から離れたからっ」
虎汰が声を張り上げて虎子ちゃんの言葉を否定する。悪いのは自分だと……。
でもムリに身体を動かした所為で、彼はうっと短く悲鳴を上げて途端に顔を顰めてしまった。彼の怪我は素人の目から見てもあまりに酷い。
まるで集団暴行にでも合ったようだった。
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