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第119話

顔を顰めたボクを見た煌騎が咄嗟に手を差し伸べようとしたけど、周りを取り囲む男の子たちが立ちはだかってそれは叶わなかった。 「やっぱりいいなぁ、恐怖に歪むこの子の顔♪」 クスクス笑いながら亜也斗は呼吸を乱して泣きじゃくるボクの姿を見て、凄く楽しそうに微笑む。 そんなの見たくなくて顔を背けると、涙の滲む視界の先に悔しそうに表情を歪める煌騎や和之さんたちの姿があった。 この世で唯一ボクに優しくしてくれた彼らが、心を痛めて苦しんでいる。その苦しみを与えているのは他でもないボク自身なのだ。 そう思うと胸が張り裂けそうだった……。 ボクは外へ出るべきではなかったのかもしれない。大好きなあの人たちを苦しませるくらいなら、今直ぐにでも消えてなくなってしまいたかった。 けれど煌騎がその心を読んだように、またボクに向かって今度は大きく首を横に振る。 「チィ余計な事は考えるな、直ぐにそこから助けてやるからっ」 「―――でもッ、……でもぉッ!」 「……大丈夫だ、何の心配もない」 彼は力強く頷くと不敵に微笑んだ。その揺るぎない眼差しは冷えきったボクの心を瞬時に暖めてくれる。 何の確信もないのに、彼ならきっとここから助けて出してくれるのではないかと期待してしまう。そんな力が彼の眼にはあった。 「へぇ、この状況で随分と余裕だね。何か策があるようだけど、その策とやらは何なのかな?」 「………フッ、(じき)に来るさ」 「はあぁ!? 何が“来る”っていうのさっ」 鼻で笑う煌騎に亜也斗は苛立ちを隠せない。 でも遠くの方から誰かが駆けてくる足音が聞こえて彼は顔色を変えた。細い眉をピクリと上げる。 「―――亜也斗ッ! そこで何をしているッ!?」 虎汰たちの更に後方にもうひとり男が勢い良く走ってきた。そして続け様に亜也斗に向かって声を張り上げる。 髪を青く染めた彼は亜也斗と同い年か一つ上くらいに見えた。その人は腹の底から怒っているのか、鬼のように恐ろしい形相だ。 皆が彼に気を取られている。その隙を狙って和之さんと朔夜さんが瞬時に動いた。 風のように身体をしならせて先ず和之さんが前列にいる男の攻撃を躱し、その後ろにいる別の男の攻撃も腕で軽く受け止めてすぐさまお腹に一撃を喰らわす。 そして気を失ったその男の身体をもう1人に突き飛ばして動きを鈍らせ、別の男の肩を掴んで大きく反動をつけた腕を顔にめり込ませた。

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