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第120話

朔夜さんは最初に和之さんが躱して体制が崩れた男の背中を後ろから蹴飛ばして転倒させ、横から襲ってきた男の攻撃もくるりと反転して躱しその反動で相手の胴体を長い脚で蹴り飛ばす。 それによって僅かに拓けた隙間を今度は流星くんと怪我を負っている虎汰がすり抜け、ボクと亜也斗の周りを囲っていた仲間が前に出たところを迎え撃つ。 二人纏めて肩を引っ掴んだ流星くんが力任せに振り回して壁に激突させ、背後から殴りかかってきた男を振り向き様に殴り飛ばした。 その横で少し体躯の良い大男が虎汰に拳を振り上げたが、彼は軽々と避けてぴょんっと飛び上がり男の顔面に重い拳を埋め込ませる。 振動で虎汰は若干顔を歪め胸を押さえたが、次に襲いかかってきた男も容易く躱して腹部に蹴りを入れ鎮めた。 あまりの早業にボクの目はついていけない。 気がつけば直ぐ目の前には煌騎がいて、強引に手を引かれたかと思うとボクの身体は彼の腕の中にあり、亜也斗は腕を捻り上げられて唸っていた。 「―――くっ! 痛ぇよクソッ、離しやがれっ!!」 「ま、待ってくれ白銀! もう決着はついたッ!! お互い学園内で問題を起こすのは不味いだろっ!? 頼む、そいつを離してやってくれッ」 短く悲鳴を上げる亜也斗を無視し、尚も腕を捻り上げようとした煌騎に青い髪の男は慌てて止めに入る。 けれど怒りが収まらないのか彼は、ボクを抱き締めたまま捻る腕を離さない。 そうして骨の軋む音が聞こえてきそうになった時、煌騎は深い溜め息を吐いて漸く亜也斗の腕を解放した。 「次にまたチィを狙うような事があれば、腕の1本や2本は失うと思え」 「……………フン、俺に情けを掛けたコト後できっと後悔するよ。今日のはほんのお遊びだから。じゃあね、おチビちゃん。また迎えに来るよ♪ 」 反省の色も滲ませず不吉な言葉を残すと、亜也斗は痛む腕を庇い青い髪の男に支えられながら逃げるように去っていった。 彼の言葉に激怒した虎汰が後を追おうとしたが、流星くんが透かさず彼を取り押さえてなんとか宥め落ち着かせる。 「お前は怪我人なんだからじっとしとけって!!」 「―――だってあいつッ!!」 「わかってる!でも今は堪えろッ」 流星くんは悔しそうに顔を歪めると、そっと後ろを振り返った。虎汰も釣られて振り向くと息を呑んで言葉を失う。

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