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第122話〜魔法の飲み物〜

それは手に取ると思った以上にヒヤリとしていてとても気持ちが良かった。思わず自分の頬に擦り寄せたい衝動に駆られる。 でも貰った物だし食べ物や飲み物を粗末に扱ってはいけないと思ったので、グッと我慢していたら朔夜さんにクスリと笑われた。 「チィ、ソレ顔に当てたいんだろ」 「フフッ、そうなの? だったら我慢しないでお顔に当てていいのに」 「………う? うぅ、でも………」 躊躇うボクに和之さんは笑顔で頷いてくれた。 まさかスリスリしてもいいと言って貰えるとは思っていなかったので、驚きも隠せずパチクリと目を丸くする。 するとそれを見た皆がクスクスと声を出して笑い出した。 「そんなことで遠慮してどうすんだよ、チィ」 「そうだよ、それに後でちゃんと飲めばいいんだから気にする事ないよ。ね?」 「あ、そか……」 流星くんも虎汰も笑顔で勧めてくれて、漸くボクも納得する。嬉しさのあまりパックのジュースをむぎゅうっと握って頬に擦り寄せた。 貰った“ちょこ味”のジュースは飲んで幸せにしてくれるだけでなく、発作で疲れた身体も冷気で癒してくれる。 ボクにとっては魔法の飲み物だと思った。 「あ、チィ、そんな強く握り過ぎると破裂するぞ?」 そう朔夜さんにやんわりと注意を受けたけど、ボクは気が付かずぷにぷにとパックの側面を押し続ける。 感触が面白くて止められなくなってしまったのだ。 そしたらパックを押し過ぎた所為か、上部の折り目がぴょこんと垂れた犬の耳のように立ち上がり、片方がボクのほっぺにぷすりと刺さってしまった。 「―――あうッ」 「あ~あ、潰しちゃったじゃないか……」 怒るというよりもやれやれと呆れたように言う朔夜さんだけど、その表情はとても穏やかで優しかった。 不恰好になってしまったパックのジュースに目を落としながら、ボクはシュンと項垂れる。 言うことを聞かなかったからこうなったのだと落ち込んでいると、煌騎が宥めるように頭を撫でてくれた。 「中身は変わらないんだから気にするな。それよりそろそろ場所を移動するぞ」 「うん、そうだね。ここじゃチィも落ち着かなくてゆっくり休めないだろうし……」 和之さんも頷きその言葉に同意する。 彼の指示で皆がゆっくり腰を上げて移動をしようとして、だけど次の瞬間ぴたりと動きを止めた。

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