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第127話
彼の言葉に心惹かれたボクは途端にパァッと顔を綻ばせ、気がつけば直ぐさまコクコクと頷いていた。
それを見て煌騎は満足そうに微笑むと再び歩き始める。……が、ボクたちの後をついて来る虎汰の姿に目を向けてまた歩みを止めた。
「………お前はついて来るな」
「へっ、何で!? あ、この怪我? これなら大丈夫だよ、見た目ほど酷くないかっ――くッ」
一瞬キョトンとして首を傾げた虎汰は、直ぐに笑顔で自分の怪我が軽傷なのだとみんなにアピールしようとする。
でも明らかに彼の額には脂汗が浮かんでいて、左肩を回そうとしたら痛みが走ったのか短く呻き声を発した。
煌騎は呆れて溜め息を吐きながら首を横に振り、それを止めさせて虎汰を静かに睨み付ける。
「………お前、アバラ逝ってるだろ。早く健吾と合流して診て貰え」
「―――ふぇっ!? 虎汰そんな大怪我してたのッ!?」
溜息交じりに言う彼の言葉にビックリし、ボクは思わず大声を出してしまう。だけど驚いたのはボクひとりだった。
みんなはこういう事に慣れているのか、やはりという顔を浮かべて苦笑を零す。それから朔夜さんが小声で『それチィにバラしたらダメだろ』と呆れたように呟いた。
その言葉はしっかりと煌騎の耳にも届いていたみたいで、ボクの真横からはまた深い溜め息が漏れる。
顔を戻すと彼は渋い顔をしていて、無理を押し通そうとする虎汰を見兼ね、帰す為にわざとバラしたのだと窺い知る事ができた。
「………虎子、無理やりにでもいいからこいつを健吾のところへ早く連れて行け」
「―――え、わたし!? あっ、そっか……うん、わかった!!」
虎汰の世話役に虎子ちゃんが任命され、彼女は一瞬戸惑うも慌ててコクンと頷く。自分は身内だし、誰よりも兄の事を熟知しているから誰よりも適任だと察したのだろう。
虎子ちゃんはボクに向き直ると『じゃあ、わたし先帰るね』と軽く手を振り、彼を担ぎ直して半ば強引に引き摺っていく。
納得がいかないのか虎汰は最後まで抵抗しブーブーと文句を言っていたけど、やっぱり妹には逆らえないらしく結局はトボトボと帰っていった……。
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