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第128話

煌騎に抱っこされたまま歩くこと数分、階段を使って建物を上へ上へと移動した先にある銀色の扉の前で、彼は1度立ち止まった。 後ろに続く和之さんたちも要領を得ているのかその場で脚を止め、全員がこちらを見上げながら待機する。 「チィ、少しの間だけ目を閉じてろ」 「……う? どして?」 首を傾げるボクに煌騎はクスリと笑うだけで、肝心の理由は教えてくれない。後ろを振り返ってみても彼と同じように皆はニコニコと笑うだけだ。 でもそれが却ってボクの中で期待が大きく膨らみ、わくわくする心が止まらなくなった。 「うんっ、わかった! んと……コレでい?」 ぎゅううぅっと目を固く瞑って更に両手で瞼を覆い隠すようにする。すると彼は我慢できないとでもいうようにクスクスと笑い出し、口許に手のひらを当てて堪える仕草をした。 笑い声が聞こえて不審に思いこっそりと薄目を開け指の隙間からそれを確認したボクは、ぷくぅっと頬を膨らませポカポカと煌騎の胸を叩く。 「どして笑うのッ!? ボク、言われた通りにしただけだよ!?」 「いや、流星がよくお前の事を小動物に似てると言っていたのを不意に思い出した。悪い………ククッ」 「むーっ、ボク小動物じゃないもんッ!」 そう言って尚も怒るのに彼はしつこく笑い続け、それに釣られたのか後ろに立つ和之さんたちも肩を揺らし始めて、遂にはクスクスと声を出して笑い出し始めてしまった。 呆気に取られたボクはでも直ぐに我に返り、う~ッと唸ってから完全に拗ねてプイッとそっぽを向く。 「ごめんってチィ、そんな顔しないでよ……」 「ホラ、せっかくのかわいい顔が台無しだぞぉ?」 機嫌を取るようにみんながボクの頭を撫でたり頬っぺたを突いたりしたけど、もうそんなので機嫌を直したりなんかしてやんないんだと意地になる。 プイップイッと顔を背け続けるボクに困り果てた彼らは、互いに顔を見合わせて苦笑いするしかなかった。 「…………ハァ、仕方ないな……」 少し離れた位置でただ一人それを傍観していた朔夜さんが呆れながらそう言うと、制服のポケットに手を突っ込みながらこちらに近づいてくる。 そしてポケットからあるものを取り出し、彼は無造作にそれを差し出した。 大きな手のひらに乗っかった小さな物体……。 よく見ると茶色い包装紙に包まれたソレの表面には、カタカナで『チョコ』と書かれていた。 「………ちょ…こ?」

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